環境問題と公共事業
3-5 水循環をどう回復するか?

 これまで、都市を中心として構成された現在の水循環システムの現状、そして本来の水循環が担っていた物質循環の機能について概観してきました。環境問題を改善するための水循環システム再構築の方向性はほとんど自明です。既に見てきた、近代の公共事業を通じて構築された水循環システムで失われた本来の物質循環機能を回復し、それをさらに豊かなものにする方向でシステムを再構築することです。
 最近、「多自然型」の河川改修法が実施され始めているのは、それなりに評価されるものかもしれません。また、都市部における雨水の中水道としての利用も、上流域からの取水量を減らし、本来の河川水量を回復するという意味で積極的な意味をもつと考えられます。
 しかし、水循環を考える場合、人間社会の中における利水、あるいは治水だけではなく、河川流域の生態系を含めた物質循環まで含めた総合的な見直しをすることが必要です。例えば多自然型の河川改修は技術的にはまだ稚拙な面が多いようですが、それだけではなく、その背景にある概念としての「親水」という人間の娯楽的な要求から、表面的な造形にとどまっており、流域の生態系を含めた河川機能の理解にまでは至っていないように思われます。
 総合的な水循環を回復するためには、上・下水道をはじめ農業用水、工業用水を含む利水面、災害のコントロールを目的とする治山・治水面、更には河川流域の土地利用形態、産業構造まで含めた総合的な水循環の見直しが必要です。




二酸化炭素地球温暖化脅威説批判 近 藤 邦 明氏 『環境問題』を考える より
[ホーム][環境問題]     [前頁] [TOP]
更新履歴
新規作成:Feb.9,2009
最終更新日:Mar.13,2009