第三節 保 険
本村ハ純然タル農村ニシテ、土地所有分配第十四章ニ示スガ如ク、偏頗甚シカラズ。寧口其ノ宜シキ得居ルト云フモ差支ナキ有様ナルヲ以テ、村民ハ別ニ保険ノ必要ヲ認メズ。且又、副業発達セズ。農産物以外別ニ収入ノ途ナキヲ以テ、金融常ニ利便ナラズ。精神上ニ於テモ僥倖ヲ思ヒ将来ヲ慮ル（寧口死後ニ於テ如何ニシテ生計スベキヤ等）等ノ必要尠キヨリ、保険ヲ附スル等ノ必要モ感セズ。為メニ他町村ニ比シ、保険加入寔ニ少数ナリ。サレバ、何レノ保険会者勧誘員ノ保険加入者少キヲ見テ、勧誘至ラザルナリトシテ入リ来ルモ、何レモ所期ノ目的ヲ達セズ。「眞瀧村ハ保険思想発達セズ」ナドト小言ヲ残シテ去ルヲ常トス。
然レドモ、近来、保険会者続々設立セラレ、一関町ニ設置セラレアル。代理店ノミニテモ実ニ二十有七八ノ多キニ達シ居ルヲ以テ、縁故親近ノ間柄ヨリ其勧誘ヲ拒ム能ハズ。タメニ加入セル者モ少ナカラズ。其編者ノ調査ニ依レバ、大略左ノ如シ。尤モ本村ハ火災保険等ニツキテハ其用無キヲ以テ、火災保険ニ加入セル者アルヲ聞カズ。多クハ生命保険、養老保険ニシテ、間々徴兵保険アリ。保険金額ハ五百円ヲ普通トシ、壱千円以上ハ僅少ナリトス。
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底本：「復刻 眞瀧村誌」
2003（平成15）年6月10日発行
発行者 眞瀧村誌復刻刊行委員会
代表 蜂谷艸平
2004年3月10日作成