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第十二節 維新後の風俗・流行
維新後、諸事改革セラルルニ当リ、從来行ハレタル前記各種ノモノモ、漸次衰頽スルニ至レリ。然レドモ、之レニ代リテ人心風教ヲ支配スベキ善良ナルモノノ起レルニアラズ。明治二十四・五年頃マデハ実ニ過渡期ノ状態ニアリシト云フベシ。
維新後今日ニ至ルマデ行ハレタルモノヲ挙グレバ、左ノ如シ。
一、幻 燈
維新後ニ於テ行ハレタルモノハ、先ツ幻燈ナリトス。ソノ最モ盛ンナリシハ、明治二十七・八年戦役ノ頃ニシテ之レニヨリ戦争ノ状態ヲ知リ志気ヲ鼓舞シタルノ効大ナリト云フベシ。衛生幻燈会又時々開催セラレ衛生思想ヲ与エラレタリ。然ルニ明治三十六・七年ノ頃ヨリ、活動写真盛ンニ行ハルルニ及ビ、幻燈ハ全ク廃シタリト云フモ過去ニアラズ。
二、活動写真
活動写真ハ、本村ニ於テ開催挙行セラルルニアラザレドモ、一関町ニ接近セルガ故ニ、之レガ影響ヲ受クルコト大ナリシナリ。
三、講演会
村農会、青年会、同窓会等諸数ノ会合行ハルルニ連レテ、一関町方面ヨリ講師ノ臨場ヲ乞ヒ講演ヲナスコト行ハルルニ至レリ。
四、芝 居
芝居モ又、村内ニ於テ行ハルルニアラズ。一関町ニ於テ挙行セラルルモノヲ観覧スルニアリ。維新前ト異ル所ハ、書生芝居ナルモノノ大ニ流行シタルニアリ。
五、稗史小説
前ニ述ベタル所ニ依レバ、之レニヨリテ得タル効果ハ実ニ大ナルモノアリト云ヒシガ、維新後ニ至リテ、小説類ノ如何ニ変遷シ来リシカハ、既ニ諸氏ノ知悉スル所、編者敢テ弁セズ。サレバ学校等ニ於テハ、小説ヲ読ムコトヲ禁止シタルコトサエアリ。故ニ、一時大イニ盛ニナリシ読者熱モ、此ニ全ク冷メ、稗史小説ヲ手ニスルモノ実ニ少キニ至レリ。
六、雑誌類
前項稗史小説ヲ読ムコト廃シタルニ引換ヘ、少年、青年其他農事ニ関スル雑誌ヲ読ムモノ多クナレリ。之レ等雑誌ハ、中ニハ内容ノ如何ハシキモノナキニアラズ。農村ニ不適当ナルモノモ又少ナカラズ。サレ共、多数ノ中ヨリ選択其ノ宜シキヲ得バ、小説等ノ如ク甚ダシキニ至ラズ。代金モ又、安価ナルヲ以テ、自然、小説ニ代リ読マルルニ至ル。其ノ村民ニ与ヘラレタル影響ハ見逃スベカラザルモノトス。
七、展覧会・品評会
展覧会ハ、種々開催セラルレドモ、教育品展覧会ヲ最トス。品評会ハ農産展覧会ノ開催多シ、本村ニ於テモ明治三十七年以来、村農会ノ主催ニテ稲作立毛品評会ヲ開催シテ今日ニ至ル。教育展覧会又学校巡番ニ開催シテ今日ニ至レリ。此レ等ハ其レゾレ独特ノ目的ノ下ニ開設セラルルモノナリト雖モ、社会教育通俗教育トシテモ又、大ナル効果ノアリシヤ疑無シ。
八、諸種ノ会合
青年会、農会ハ勿論、其ノ他団体何レモ、年々総会ヲ開キ会合ヲナス。小学校ニ於テハ生徒学芸会、父兄懇話其他諸種ノ催シヲ以テ教育ノ普及及風規ノ改善ニ努ム。サレバ、之レ等会合ハ如何ニ良結果ヲ与ヘ、人智ノ進歩諸方面ノ改善ヲ促シタルカハ、想像ニ余リアリトイフベシ。
九、浪花節
デレロン祭文廃シ、久シク之ニ代ルモノナカリシガ、東都ニ彼ノ雲右ェ門現レテ浪花節ノ流行ヲ見ルヤ、本村地方又、之レガ流行ヲ見ル。其ノ語ル處、赤穂義士伝ヲ通例トス。
十、印刷物ノ配布
活版術進歩アリ。特ニ謄写版ノ発明アリテ、本村役場学校皆、謄写版ノ備無キハ無シ。サレバ、時折リ知悉セシムベキ事項及必要事項ヲ印刷ニ付シテ各戸ニ配布スルヲ通例トス。之レヨリ得ル所ハ知識又看過スベキニアラズ。要スルニ、本村ハ一関町ニ接続シ居ルヲ以テ、一関町ニ於テ行ハルル総テノ興行、総テノ施設ハ、直チニ其ノ影響ヲ蒙ルモノトス。
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底本：「復刻 眞瀧村誌」
２００３（平成１５）年６月１０日発行
発行者 眞瀧村誌復刻刊行委員会
代表 蜂谷艸平
２００４年３月１０日作成