救　済
　明治三十八年ニ於ケル凶作ノ影響、前項ニ記セル如ク、實ニ前古未曽（有）ノ惨状ヲ呈シタリ。サレバ、村民ハ、月ヲ経日ヲ重ヌルニ從ヒ、窮乏ヲ訴ヘ、之レガ救済ノ方法ヲ講ゼザル時ハ、学校等ハ自然閉鎖セラルベク、壮者ハ老人子供ヲ棄テヽ迄モ他ニ出稼セザルベカラズ。
　食スルニ物ナク、翌年ノ耕作等ハ到底見込ミ無シ。サレバ之レ等救済ノタメ、本郡ニ於テハ窮民救済会ヲ組織シ、各町村ニ支部ヲ置キ、互ニ相呼應シテ以テ救済ノ實ヲ挙グルコトヲ期セリ。
　三十九年一月十日、組織愈々成ル。其ノ会則、左ノ如シ。

　西磐井郡凶作窮民救済會會則（明治三十九年一月十日制定）
第　一条　本會ハ西磐井郡ニ於ケル三十八年凶作窮民ノ救済ヲ以テ目的トス
第　二条　本會ハ本部ヲ西磐井郡役所内ニ設ケ、支部ヲ各町村役場内ニ置ク
第　三条　本會本部職員左ノ如シ
　　　　會長一名　幹事長一名　理事若干名
第　四条　本会支部ノ職員左ノ如シ
　　　　支部長一名　支部副部長一名　理事若干名　委員若干名
第　五条　本部ノ職員及支部正副長ハ會長之ヲ嘱託ス
第　六条　支部ノ委員及理事ハ支部長之ヲ嘱託ス
第　七条　支部ハ本部ノ方針ニ從ヒ其ノ町村内ニ於ケル窮民ノ救済ヲ遂行スルモノトス
第　八条　支部ノ委員ハ其町村内ヲ担任シ、毎週一回以上窮民ノ各戸ニツキ親シク視察ヲ遂ゲ、其生活状態ヲ詳細ニ支部長ニ報告スルモノトス
第　九条　支部長ハ窮民台帳ヲ調製シ置キ、毎月一回以上委員会ヲ開キ、窮民ノ生活状態ヲ調査シテ、之ニ加除訂正ヲ加ヘ町村長ノ救済事務ヲ幇助シテ食料及被服薬飼ノ給與生業ノ扶助並ニ小学校児童学用品及弁当補給ノ途ヲ講ズル等其町村民ヲシテ或ハ飢餓ニ泣キ或ハ通学廃スルガ如キ不幸ニ陥ルモノナカラシムルコトヲ期スベシ
第　十条　支部ハ適宜細則ヲ編成シテ本則ノ運用ニ努メ、并ニ生業扶助ノ団体ヲ作リ地方窮民ニ適應スル事業ヲ授クル等、苟モ懶惰放逸ヲ以テ食料ノ給與ニ與ルモノナカラシムコトヲ図ルベシ
第十一条　調査ノ事項左ノ如シ
　　　一、衣食住ノ状態　　二、老人病人ノ状態　　三、衛生ノ関係
　　　四、業務ノ適否労働ノ任否　　五、小学校通学児童ノ状態
　　　六、其他
第十二条　直接ノ救済
　　　一、食料品及被服薬飼　　二、小学児童ノ弁当及学用品
　　　三、生業資本　　四、付加工賃　　五、其他
第十三条　間接ノ救済
　　　　　私人若シクハ団体等ヲ以テ地方適切ナル事業ヲ起シ窮民ヲシテ就業セシメ其工賃ヲ與フルモノトス　其ノ事業ノ種類　製炭、開墾、植樹、藁細工、竹細工、経木眞田業、麻縄綯、養蚕業、其他
第十四条　第十条ニヨリ編成タル規則及組織シタル団体ハ其都度本部ニ報告スベシ
　　　　　本会組織以前各町村ニ於テ組織シタルモノヲ本会機関トナスコトヲ得　右ノ場合ニハ本条第一項ニヨリ報告スベシ
附則
第十五条　支部長ハ一週間以内ニ支部職員ヲ嘱託シテ其職氏名ヲ会長ニ報告スベシ
　　　　　本村ハ直チニ左ノ支部細則ヲ制定シタリ

　窮民救済會眞瀧村支部細則（明治三十九年二月制定）
第　一条　本支部ハ救済會支部規則ノ大綱ニ基キ其運用ヲ努ムルタメ細則ヲ設ク
第　二条　本支部ニ理事二名ヲ置ク
　　　　　但事務ノ都合ニヨリ増減スルコトアルベシ
第　三条　本支部ニ委員弐拾八名ヲ置ク
第　四条　本支部ノ事務ヲ分ツコト左ノ如シ
　　　　　第一部、第二部、第三部、第四部、第五部
第　五条　第一部ニ於テハ左ノ事務ヲ掌ル
　　　　　一、本会規則第八条第十条ノ趣旨ニ基キ他部ニ専属セザル事項
第　六条　第二部ニ於テハ左ノ事務ヲ掌ル
　　　　　一、本会規則第十一条ニ関スル事項
第　七条　第三部ニ於テハ左ノ事務ヲ掌ル
　　　　　一、本会規則第十二条ニ関スル事項
第　八条　第四部ニ於テハ左ノ事務ヲ掌ル
　　　　　一、本会規則第十三条ニ関スル事項
第　九条　第五部ニ於テハ左ノ事務ヲ掌ル
　　　　　一、出納及収支精算ニ関スル事項
第　十条　各部ノ事務ハ他部ノ合議ヲ経、支部長ノ決議ニ依リテ之ヲ行フベシ
　右支部細則ニヨリ役員ヲ選定シ支部長（村長）ハ直チニ嘱託状ヲ發シ同時ニ集会ヲ求メ各部ニ配属シテ活動シタリ
　其ノ役員氏名左ノ如シ
　　支部長　　　　　　　　　副支部長
　　　村長　熱海　懿　　　　　助役　八木　廉平
　　理　事
　　　収入役　千葉傳五郎、書記・中村乕三、書記・伊藤　賃、書記・大和鉄之助、
　　　書記・伊藤常三郎
　　委　員
　　　村会議員　　小嶋夘左治　　菊池慶三郎　　小野寺英作　　伊藤清太郎
　　　　　　　　　木村源太郎　　菅原永三郎　　千葉政治　　　蜂谷宗三郎
　　　　　　　　　黒澤多吉　　　小野寺安之丞　成澤　泉　　　千葉三次郎恤
　　　区　長　　　佐々木正右ェ門　千葉亀治　　石川徳助　　　高橋甚之助
　　　　　　　　　蜂谷辰治　　　千葉己代吉　　石川馬之丞　　小野寺喜一郎
　　　　　　　　　千葉長太夫　　千葉助信
　　　學務委員　　小野寺揆一　　阿部吉五郎
　　　學校長　　　鈴木孫八郎　　菅生寿太郎　　菅野利耕　　　熊谷良治
　　　　　　　　　外會員五十六名
　　窮民視察委員
　　　内藤泰吉　　木村源太郎　　菅原和四郎　　千葉富太郎
　五月二十八日、更ニ又、左ノ役員ヲ嘱託セリ。
　　馬齢薯疫病予防委員
　　　小野寺揆一　千葉富太郎　　八木壮八郎

　村民食料ノタメニ、特ニ馬齢薯種子ヲ北海道ヨリ購入シテ配付シ裁植セシメタレバ、之ガ疫病予防ノタメニ各戸巡回指導ノ任ニ当ル役員ナリ。
　此ノ救済會設立セラレテ、窮民ニハ事業ヲ与ヘテ工賃ヲ得サシメ、又一方、会員ハ会費ヲ負担シテ窮民衣食費・罹病者ノ薬費・小学生徒ノ學用品・弁当費等々ニ使用シ耒レ共、限リアル資力ヲ以テ、到底其ノ全般ノ救済ヲナシ能ハズ。村民ハ日一日ト悲観ニ陥リ救済會役員ノ盡力モ實ニ術ナキニ至ル。

　御救恤御下附
　東北地方、非常凶作ノタメ人民困難ノ趣、上聞ニ達セルヽヤ、明治天皇、照憲皇太后ニハ深ク憫然ニ被思召、御救恤金御下賜ノ御沙汰ヲ拝スルニ至レリ。
　御仁恵御聖思ノ優渥ナル村民ハ、唯々感泣ノ外ナカリキ。御救恤金御下賜相成リシニ依リ、本県知事ハ告示ヲ発シ、本郡長ハ訓示ヲ発セラル。其ノ全文、左ノ如シ。

　岩手縣告示第三十九号
　本県下非常凶作ノタメ人民困難ノ趣、憫然ニ被思召、御救恤トシテ、聖上皇后両陛下ヨリ金一萬円下賜相成、救済ノ資ニ可充旨、御沙汰被為仕候趣、宮内大臣ヨリ達セラル
　　　明治三十九年二月二日　　　　　　岩手県知事　押川　則吉

　西磐井郡　訓示第二号
　県下非常凶作ノ為メ人民困難ノ趣、憫然ニ被思召、御救恤トシテ、聖上皇后両陛下ヨリ金一萬円下賜相成、救済ノ資ニ充ツベキ旨、御沙汰被為仕候趣、県知事ヨリ傳達有之
　聖思優渥、唯感泣ノ外ナキ次第ニ候条、本県告示第三十九号ニ從ヒ、右ノ趣周方取計ヒ且ツ救済上献身的報効ヲ図シ　以テ聖旨ニ答ヒ奉ランコトヲ期スベシ
　　　明治三十九年二月三日　　　　　　西磐井郡長　中野　脇蔵

　北亜米利加大統領ノ救恤
　北米合衆国大統領ルーズベルト閣下ハ、我ガ國東北地方大凶作ノタメ人民飢餓ニ瀕シ惨状ヲ極メ居ル由ヲ聞召サレ、合衆国民ニ対シ左ノ趣意ノ公文ヲ発布セラレタリ。之ヲ掲グレバ、
　電信訳文　　　　　　　華盛頓発　東京着
　　　明治三十九年二月十四日
　加藤外務大臣　　　　　　　　　　日置代理公使
　第十五号
　　往電第十四号（飢饉救恤ノ件）ニ関シ、大統領ハ其名ヲ以テ左ノ趣旨ヲ発布セリ。
　　日本ノ北部ニ於ケル凶荒ハ、吾人ガ当初推測セシヨリモ遙ニ惨憺タル状況ニシテ、飢餓ニ瀕スルモノ数千人ニ及ベリ。此ノ如キハ、如何ナル國ニテモ時々之ニ遭遇スルコトヲ逸シ難キ災殃ナリ。困難ニ際シ直ニ救済ヲ致スベキハ、人民間ニ於テモ個人間ニ於テモ異ルコトナシ。余ハ米國民カ其余裕ヲ割キ、以テ大国民ニシテ我友邦タル日本ノ窮民ヲ救助センコトヲ切望ス。此ノ用途ニ充ツベキ寄付金ハ、米國赤十字社ヘ送付セラレタシ。同社ハ之ヲ日本赤十字社ニ転送シ其ノ使用方法ハ日本ノ政府ノ指揮ニ依ルコトヽスベシト
之ヲ維新前ニ於ケル凶作天明天保ノ當時ニ比ベ見バ實ニ宵壌ノ差モ唯ナラズ、四海同胞兄弟トハ口ニスル所ナレド、今目ノアタリカヽル深厚ナル情誼ニヨリ友邦國民温キ義捐救済ヲ受ケ以テ非常惨害ヲ免ルヽヲ得タルハ、偏ニ明治聖代ノ賜トシ、感極マリテ其ノ言フ所ヲ知ラザルナリ。

　義捐金品ノ配当受領
　三十九年二月ニ入リ、各方面ヨリ続々義捐金ノ寄贈アリ。其ノ本村ニ於テ配当ヲ受ケ又ハ直接寄贈ヲ受ケタルモノ、實ニ左ノ如シ。
一、恩賜金配当　　　　　　　　　　　　　　　金、六拾七円也
二、米國大統領募集義捐金ノ分配当　　　　　　金、九百九拾円弐拾銭也
三、一般内地募集義捐金郡役所ヨリ配当ノ分　　金、参百五拾八円弐拾銭也
四、小農者救済金配当　　　　　　　　　　　　金、六百弐拾九円弐拾銭也
五、種子籾料配当　　　　　　　　　　　　　　金、壱千参拾七円也
　　　弐百拾壱人ヘ給與スベキ種子籾百参石七斗購入代


　物品ノ部
一、米國大統領募集ノ部
　　　煉味噌　　　参百匁入鑵詰　　参百六拾固也
　　　麦粉　　　　　　　　　　　　弐拾石六斗九升也
　　　醤油エキス　壱百匁入鑵詰　　六百四拾八箇也
　　　重焼パン　　六拾食入　　　　拾箇
　　　馬齢薯　　　四拾俵　　　　　五百弐拾貫匁也
二、暹羅皇帝陛下御寄贈米
　　　シャム米　　　　　　　　　　弐石四斗六升也
三、在北京シヤトル恤兵會贈
　　　麦粉　　　　　　　　　　　　弐石八斗参升也
　　　小麦　　　　　　　　　　　　四石一斗四升也
四、在桑港手島謹二氏寄贈
　　　馬齢薯　　　　　　　　　　　壱石也
五、内地一般募集ノ部
　　　米　　　　　内國米　　　　　壱拾六石弐斗九升也
　　　　　　　　　外國米　　　　　五百五拾参袋也（小袋）
　　　麦　　　　　　　　　　　　　八石壱斗六升也
　　　麦粉　　　　　　　　　　　　八石六斗弐升五合也
　　　乾馬齢薯　　　　　　　　　　五拾七貫匁也
　　　雑穀
　　　味噌　　　　　　　　　　　　四貫目也
　　　漬物　　　　　　　　　　　　参貫目也
　　　薬品　　　　　　　　　　　　壱百八拾包也
　　　醤油　　　　　　　　　　　　弐斗四升弐合也
　　　種子物　　　　　　　　　　　弐貫七百六拾匁也
　　　古着　　　　　　　　　　　　弐百壱拾五点也
　　　菓子　　　　　　　　　　　　壱百参拾七袋也
　　　ミール　　　　　　　　　　　弐斗五升也
　　　唐梁　　　　　　　　　　　　壱百弐拾七袋也
　　　グリッツ　　　　　　　　　　壱斗八升五合也
　　　肥料（過燐酸石灰　　　　　　壱百四拾七俵也
　　　　　　硫酸アンモニア）
　　　馬齢薯疫病予防薬　　　　　　参拾貫匁也
　　　鑵詰　　　　　　　　　　　　参拾箇也
　猶此ノ外ニ直接個人又ハ團体ヨリ義捐寄贈ヲ受ケタルモノ少ナカラズ。
　其ノ種別数量ハ此ニ詳記スル繁ヲ避ケ、寄贈者ノ芳名ノミヲ録シテ陳謝ノ意ヲ表ス。
　因ニ諸氏ヨリノ寄贈ノ詳細ハ村役場台帳ニ明記シアリ。
　　　　　伯爵　　伊達宗基殿
　　　　　　　　　三重件一志郡阿坂村浄眼寺殿
　　　　　　　　　岩手縣佛教救済會幹事廣嶋文硯殿
　　　　　　　　　静岡縣小笠原郡曽我村正法寺住職殿
　　　　　　　　　一関町笠原親寧殿
　　　　　　　　　東京市神田区小林モト外四名殿
　　　　　　　　　相州小田原最上寺殿
　　　　　　　　　東京萬朝報社内理想團殿
　　　　　　　　　横濱サミユル商会殿
　　　　　　　　　東京府野方村漬物合社殿
　　　　　　　　　東京府淀橋町井上龍太郎外一名殿
　　　　　　　　　東京府永田義原殿
　　　　　　　　　盛岡市愛國婦人会殿
　　　　　　　　　高山社・利根川社　村田庸平殿
　　　　　　　　　大阪市東区大矢奈良吉殿
　　　　　　　　　加奈太政府殿（麦粉）
　　　　　　　　　東北凶作救済會殿
　　　　　伯爵　　南部利淳殿
　　　　　　　　　クリスチャン教会殿
　　　　　　　　　外国人救済會殿
　　　　　　　　　小学児童救済會殿（全国小学校）
　右金品ハ直ニ救済會ノ規定ニヨリ配当分與シ、窮民ヲ救済セリ。又、一方ニ於テハ間接救済ノタメ事業ヲ起シ、窮民ニ職業ヲ與ヘ、工賃トシテ給與セリ。

　配当　給與
　義捐救済金及物品ハ、前項救済事業ニ附加工賃、賃金等トシテ給與シタル以外、窮民ニ配当給與シタリ。其ノ方法ハ、救済會役員ハ各々其ノ受持也ヲ定メ、常ニ窮民状態ヲ調査シテ一定ノ用紙ニ記入シ、支部長（即チ村長）ニ報告シ、支部長ハ之ニヨリ時宜ヲ見計リテ給與セリ。
　学校ニ於テハ、学用品ヲ購入シ置キテ、之レヲ給與シ、又、学校ニ於テ炊キ出シヲナシ、晝食ヲ供スル等ノ施設ヲナシ、救済ヲ全カラシメタリ。サレバ、村内ニテハ餓死セル者一人モ無シ。学校生徒ノ出席歩合ニモ、サシタル影響ヲ及ボサザルヲ得タリ。此クノ如ク上ハ恭ケナクモ聖上陛下ヲ初メ奉リ、下ハ小学校生徒ニ至ルマデ、吾ガ東北ノタメ御救恤義捐至ラザルナク、シカモ海外諸國北米合衆國ヲ初メ、続々同情ヲ寄セラレタルヲ以テ、三十九年十月頃ニ至レバ、村民自活ノ途モ立ツニ至リテ、以テ救済ヲ廢スルニ至レリ。
　此ニ於テ、前ニ慈恵院養育院ニ収容セラレ居リタル児童等ニ対シテモ、帰村ヲナスベク取計ラヘタルヲ以テ、同年十一月頃ニハ、過半、帰村ヲ見ルニ至レリ。
　帰村ニ際シテハ、収容セル各院ハ其ノ保護ノ至レル、実ニ感謝ニ堪エザルモノアリシナリ。即チ、縣又郡別ニヨリ、数人役員附添ヒ保護シ来リ、一定ノ場所ニ於テ、村長ニ立會ノ上父兄ニ引渡サレタリ。
　其ノ一例ヲ挙グレバ、東京佛教婦人救済會ニ於テハ、岩手縣全体ヨリノ収容ヲ引渡スベク引率シ来レリ。引率者ハ、同會幹事長高田多美子、常務幹事金子さく子、鍋田よし子、相原とき子、水谷きん子ノ五氏ニテ、西磐井郡ヨリ、児童ハ一関町願成寺ニ於テ、郡長村長立会ノ上、各父兄ニ引渡サレタリ。當時之ヲ実見セシニ、児童ハ何レモ、之等附添ノ人々ニナツキ親シミ、其ノ別レヲ惜シム様、慈母モ遠ク及バザル所アリ。以テ如何ニ親切丁寧ニ養育セラレタルカヲ知ルベシ。目ノアタリ之レヲ見タル父兄等、皆感極ッテ泣カザルハ無カリキ。
　當時、本村村長・父兄連署ヲ以テ会長ニ差出シタル謝状、左ノ如シ。

　拝啓
　当郷飢泣児童御救育ニ就テハ、一年一日ノ如ク辛酸萬苦ヲ御厭ナク赤子ノ慈母ニ於ケルヨリモ一層ノ御慈悲ヲ以テ養育ニ教訓ニ御参粹下サレ、且ツ又、今回帰郷ニ際シテハ、幾多ノ金品等迄御恵與下サレ候段、誠ニ謝辞ヲ表白スベキ様、無之拙筆ノ能ク之接述シ得ザル次第ニ候。唯々御厚意ノ有難キニ咽ブ他無之、帰郷當時、当郷願成寺ニ御休息中、児童ニ接スル情況ヲ拝見仕候ニ、血族父兄ト雖モ及難キ親交ノ御取扱ヲ蒙リタルヲ、如何ニシテ御高恩ニ報ヒ申サント、只管感涙ニ不堪候。
　申マテモ無之、維新前、偏頗法布ノ時代ニ於テハ、斯ル悲惨ノ儀ニ際会スルモ、此等幾多ノ児童ハ唯タ飢道ニ斃レテ悲惨極マル街ヲ見ルハ当然ナルニ、幸ヒ文明ノ時運ニ伊ヒ高徳ナル慈善法会ノ御救育ニ因リ、此ノ飢道ニ立チシ幾多ノ窮児ハ、漸ク此ノ悲境ヲ逸出スルヲ得タルモノト、深ク感罷在候。
　帰途児童等ノ収態ニツイテハ、目下通学勉強致シ居候次第、児童ニ対シテハ御恵與ノ金品ヲ以テ立身ノ基礎ヲ充テシメ、誓テ他ニ流費セシムルコトナク、御會ノ趣旨ヲ服膺シテ他々御厚思ニ報スベキノ手段ハ乍不及取計申可候間、御一同ヘ御鶴聲サレ度、先ハ不敢取御礼ヲ合セ、将来御會ノ倍々御隆盛ナラン事ヲ祈上候。
　　明治三十九年十一月七日　　　　　　　　真滝村長　　熱海　懿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　児童ノ父
佛教婦人救護会
　伯爵夫人　宗　尚子　殿


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底本：「復刻　眞瀧村誌」
　２００３（平成１５）年６月１０日発行
発行者　眞瀧村誌復刻刊行委員会
代表　蜂谷艸平
　２００４年３月１０日作成