大気温度はどのように決まるか
§0.はじめに

 二酸化炭素地球温暖化仮説は、幼稚な数値シミュレーションモデルによってのみ支持されたものであり、現実の気象観測結果とは大きな乖離を示している。気象シミュレーションモデルは、気象現象の基本的な条件すら満足できない欠陥モデルである。本稿では気象現象の基本的な問題である、下層大気の温度構造がどのようなものかを示し、二酸化炭素地球温暖化仮説、特に『暴走温室効果』というものがまったくの虚構に過ぎないことを示すことにする。


§1.惑星大気

1−1 地球型惑星

 地球を含めて、太陽に近い方から水星、金星、地球、火星とその外側の小惑星帯までをまとめて『地球型惑星』と呼ぶ。その特徴は、中心から内側1/2の半径が金属、外側1/2が岩石によって構成されている。その成り立ちは、宇宙空間に漂っていた塵が太陽の周りに円盤状に回転を始め、次第に引力で引き合い塊となり、更に微惑星にまで成長し、これが互いに衝突して惑星にまで成長したと考えられている。こうして誕生した原始地球型惑星は、比較的類似の原子比率によって構成されていると考えられる。
 原始地球型惑星は、当初は微惑星衝突の莫大な運動エネルギーの解放によって極めて高温であった。そのため内部の揮発成分が蒸発し、これが原始大気となった。金星や地球程度の惑星の場合、水蒸気とCO2を主成分とする数100気圧の大気で覆われていた。その結果、莫大な熱エネルギーと分厚い大気の保温効果によって、原始地球型惑星は全球が溶融した『マグマ・オーシャン』になっていたと考えられている。その結果、重たい金属が惑星中心に析出し、その周囲を比較的軽い溶融した岩石が覆う2層構造が形成された。

 その後、次第に分厚い大気を通して惑星の内部熱を放出しながら冷却を続けている。

1−2 地球大気と金星大気

 原始地球は約46億年前に誕生し、数億年間冷却した時点で水蒸気が凝結して地表面に到達できる程度の温度にまで冷却された。こうして約40億年前に原始海洋が誕生した。原始海洋が出来上がる過程で、大気中から水蒸気とともに、水に溶け込んだCO2が取り除かれ、急速に地球大気は薄くなった。それにともない、急速に気温が低下した。
 原始地球誕生当初の地球大気は水蒸気(300気圧程度)とCO2(100気圧程度)を主成分とする400気圧程度であったのが、原始海洋が出来上がる40億年ほど前にはN2とCO2を主成分とする2気圧程度にまで激減した。この間、地球の表面温度は数1000℃から100℃程度にまで急激に冷却されたと考えられている。
 N2の濃度はその後現在まで大きな変化は無い。CO2については、その後の地球に登場した光合成生物の誕生と、大陸形成にともなう堆積岩の生成によって次第に大気中から取り除かれ、替わりに大気中のO2濃度が増え、現在の大気組成になったと考えられている。

丸山・磯崎「生命と地球の歴史」p.163

 金星は地球型の惑星であり、大きさもほとんど変わりない。太陽からの距離は地球の70%程度、太陽放射強度は2倍程度と考えられる。原始金星はほとんど原始地球と同じような生い立ちであったと考えられる。
 唯一つだけ大きな違いがあったのは、初期の冷却過程の中で、原始海洋が形成されるまで地表が冷却される以前に何らかの理由で大気中から水蒸気を失ってしまったことである。原因は明らかではないが、強い紫外線によって水蒸気がHとOに分解され、軽いHを宇宙空間に放出してしまったのではないかと考えられている(Oについては未だわかっていない。)。その結果、現在の金星大気は原始大気に含まれていたCO2をそのまま残した90気圧という分厚い大気に覆われている。

 この唯一の違いが生態系を持つ水の惑星地球と不毛の灼熱の惑星金星を分けたのである。


§2 惑星下層大気の鉛直温度構造

2−1 熱収支

 定常状態にある惑星下層大気の温度構造を決めるための基本的な条件の一つは、下層大気上層における熱エネルギーの平衡条件である。
入力:太陽放射の入射量
出力:下層大気上層から宇宙空間に放出される赤外線放射、(大気を透過した地表面からの赤外線放射)

 太陽放射の入射量は、大気や地表面の反射率(アルベド)に大きく依存している。地球表面の反射率は植生や表面性状で大きく変わる。また雲量によっても大きな影響を受ける。現在の地球全体の平均的な反射率は30%程度である。
 赤外線放射量が決まると、ステファンボルツマンの式から近似的に赤外線放射をする下層大気上層の平均的な温度を求めることが出来る。

裸   地  10〜25
砂、砂漠  25〜40
草   地  15〜25
森 林 地 10〜20
新   雪  79〜95
旧   雪  25〜75
海面(高度角25度以上)
10以下
海面(高度角25度以下)
10〜70
地球の表面性状による反射率(%)

 もう一つの条件は、下層大気の下端=地表面における熱エネルギーの平衡条件である。
入力:太陽放射の直達放射、大気からの赤外線放射
出力:地表面からの赤外線放射、熱伝導、(蒸散潜熱)

 地表面からの赤外線放射量がわかれば、ステファンボルツマンの式から地表面温度を求めることが出来る。地球大気では地表面からの蒸散量が表面温度を大きく左右する重要な因子となる。

2−2 大気の断熱圧縮

 前節で下層大気上層と地表面の温度を求めた。ではその間の大気の温度の鉛直構造はどのようにして決まるのであろうか。ただし、下層大気の大気組成は一定とする。

 気体は、断熱的に圧縮することによって温度が上昇する。ある高度における大気の温度をTとし、これを断熱的に1気圧にした時の温度T1を『温位』と言う。温位が等しい大気とは、単位質量あたりの熱エネルギー量が等しいく、同じ「重さ」を持つ。

 前節で求めた下層大気上層の放射温度からその高度を求めて起点とし、この大気を各高度の大気圧にまで断熱的に圧縮した時の温度を、高度にたいして示した直線を描くことが出来る。こうして描いた直線の高度に対する温度勾配は g/Cp (g:重力加速度、Cp:定圧比熱)になる。この直線上では同じ温位が保たれている。一般的に、任意の温位の大気を断熱圧縮した場合の温度を、対応する高度に対して描いた直線(=以下、等温位直線と呼ぶことにする。)の勾配は g/Cp になる。温位T1の等温位直線は次式で表される。

T=T1−g/Cp×H (Hは1気圧の高度を原点とした高度)

 下層大気上層の放射温度を固定し温度勾配を g/Cp よりも少し小さい直線を描くと、この直線上では高度が低いほど温位が低く(=重く)なり、大気は上下運動することが無く安定する。

 下層大気上層の放熱温度を起点にして描いた、等温位直線は、大気が安定するための大気温度の上限値を与えている。もしある高度の大気の温度がこの直線よりも高温であるか、あるいは温度勾配が g/Cp を超える部分がある場合、大気は相対的に軽く不安定になるため上方に移動することになる。この大気の移動にともなって大気が保有する熱エネルギーも上方へ移動し、上方ほど温位の高い安定成層の大気構造を回復する。
 つまり熱的に安定した大気温度の鉛直構造とは、太陽放射の入射量に対する平衡条件によって決まる下層大気上層の赤外線放射温度とその平均的な高度が決まると、それ以下の大気温度の鉛直分布は、下層大気の重力に対する安定性によって決まるのである。
 具体的な温度分布は、下層大気上層における熱平衡条件によって決まる赤外線放射温度とその平均的な高度を起点とした等温位直線よりも少し温度勾配の小さな直線によって近似できる。

* 温位
@重力場における気圧
  重力場における大気の微小立体に作用する鉛直方向の力の釣り合いから、
    P+dP=P−ρg dz
    dP=−ρg dz
 ここで、比容v=1/ρ(単位質量の空気の体積)を用いて書き直すと、
   ∴dP=−(1/v)gdz    (1)

A熱力学第1法則
 単位質量の気体に加えられた熱量(dq)は、その過程で気体がした仕事量(dw)と内部エネルギーの変化量(du)の和と等しい。
   dq=dw+du
 ここでは断熱過程を取り扱うので、 dq=0 である。圧力Pに抗して外部に対してした仕事量は、体積変化を dv とすると、dw=Pdv である。定積比熱をCvとすると、温度変化 dT による内部エネルギーの変化量は、du=CvdT である。以上より、
   0=Pdv+CvdT   ∴Pdv=−CvdT    (2)

B気体の状態方程式の微分
 単位質量に対する気体の状態方程式は、vを比容、Rを気体定数として次式で表される。
   Pv=RT
 状態方程式の微分を求めると、
   dPv+Pdv=RdT=(Cp−Cv)dT   (∵定積比熱Cvと定圧比熱Cpには、Cp=Cv+Rの関係がある。)
 断熱過程なので、式(2)より Pdv=−CvdT なので、
    dPv=CpdT    ∴dP=(1/v)CpdT   (3)

C等温位直線
 式(1)と式(3)より、
   CpdT=−gdz   (4)
 式(4)の左辺を1気圧における大気温度T1から、1気圧を基準とした高度Hにおける大気の温度Tまで積分し、右辺を0からHまで積分する。
   Cp(T−T1)=−gH
  ∴T=T1−(g/Cp)H
※厳密には、重力加速度gはz(高度)の関数になるが、大気厚は惑星半径に比べて十分小さいとして一定値で近似している。

2−3 地球対流圏大気の平均的温度分布

 まず最初に地球大気について考えることにする。

 地球大気の特徴は、水が液相と気相との間で容易に相変化する点である。これが地球の対流圏の気象現象を複雑にしている。まず最初に、水蒸気を含まない「乾燥大気」について考えることにする。
 最初に、平均的太陽放射強度(0.49cal/cm2・min)を100とした場合の地球大気の平均的な熱収支を下図に示す。

 2-1で示した大気上層の熱平衡条件から、太陽放射からの入力は70(=100-30[反射])、地球からの出力は、70=64(大気上層からの赤外線放射)+6(大気を透過した地表面からの赤外線放射)となる。大気上層の赤外線放射温度はステファンボルツマンの式

S=c・T4 ( c=8.1×10-11cal/cm2・min・K4)

からもとめることが出来る。

S=0.49cal/cm2・min×64/100=0.3136cal/cm2・min より、
T={(0.3136cal/cm2・min) / (8.1×10-11cal/cm2・min・K4)}-4≒250K=-23℃

となる。乾燥大気の等温位直線の勾配(=温度減率と呼ぶ)は、

乾燥大気の定圧比熱 Cp=0.2399 cal/g・℃≒1004m2/s2・℃
温度勾配(温度減率) g/Cp=(9.8m/s2)/(1004m2/s2・℃)=0.0098℃/m

となる。地球大気では、地表温度がそのまま温位を表すことになるので、任意の高度の大気温度は次式で表される。

T=T1−0.0098H (Hは高度、単位:m)

つまり、標高が100m上がるごとに約1℃温度が下がることになる。

槌田敦「CO2温暖化説は間違っている」p.149

 地球大気において、温度が-23℃になる高度は5900mになる。これを起点として、温度勾配0.0098℃/mで描いた等温位直線を「乾燥直線」と呼ぶ。乾燥直線の地表面における温度は、高度5900mで-23℃を示す大気の「温位」を示す。実際に計算すると、-23+0.0098×5900≒35℃になる。つまり、乾燥した地球大気が安定した定常状態にあるとすれば、平均的な地表温度は35℃を超えることは無い。

気象庁ホームページ「気温の鉛直分布から見た大気の構造」
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/whitep/1-1-1.html

 実際の地球大気の対流圏における平均的な温度の鉛直構造は、対流圏上端、高度11kmで-56.4℃、地表温度は15.2℃程度といわれる。温度勾配は(15.2+56.4)/11≒6.5℃/km=0.0065℃/mになる。
 実際の温度勾配は乾燥大気の温度勾配よりも小さい値を示している。これは地球大気が水蒸気を含んでいるためである。水蒸気を含んだ大気は軽いために上昇傾向を持つが、上昇にともなって減圧され断熱膨張することで温度が低下し、水蒸気から水滴あるいは氷粒に相変化する。この相変化にともない大気に放熱するために大気は暖められる。そのため水蒸気を含んだ湿潤大気の平均的な温度勾配は乾燥直線の温度勾配よりも小さくなる。
 乾燥大気であれば、乾燥直線よりも温度勾配が小さければ、大気下層ほど温位が低く大気は安定した成層構造を持つ。しかし、地球大気は気体としての分子量が大気の平均分子量29よりも小さく、しかも相変化する水を含むために、水蒸気(分子量18)を含んだ大気は温位が低くても軽いために大気上層へ移動するため大気中に対流運動が起こる。相変化をともなう水の存在が、地球の対流圏の気象現象を本質的に決定しており、極めて複雑な気象現象の原因である。

2−4 金星下層大気の平均的温度分布

 金星の下層大気の温度構造を見ておくことにする。太陽からの金星の距離は、地球までの距離の0.723倍(=108200/149600)である。平均的な太陽放射強度は0.49/(0.723)2=0.94cal/cm2・min程度である。太陽放射の反射率は78%程度なので、有効な太陽放射強度は0.94×(1.00-0.78)=0.2068cal/cm2・minとなる。金星の下層大気上層における平均赤外線放射温度は、

T={(0.2068cal/cm2・min) / (8.1×10-11cal/cm2・min・K4)}-4≒225K=-48℃

である。
 また、金星大気の乾燥大気の温度勾配=10.6℃/km程度である。乾燥大気の温度勾配は地球大気とほとんど変わらない。

 金星大気の温度の実測値の例を下図に示す。


http://www.dlr.de/os/forschung/projekte/venuspfs/index/pfs.html


http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~totera/official/study/graduate/thesis/013.htm

 下層金星大気の温度勾配は、8.98℃/kmで安定しており、乾燥直線の勾配10.6℃/kmよりもやや小さい値なので、金星大気は安定した成層構造を持っていると考えられる。ただし、50km〜65kmまではH2SO4の雲の相変化による熱の放出があると考えられている。

 金星大気の鉛直温度構造も、基本的に大気の重力的な安定によって決まっていると考えられる。金星大気がCO2で構成されているために温室効果によって表面温度が470℃程度と高温であると説明されることがあるが、これは正しくない。
 金星大気から宇宙空間への赤外線放射の放射温度は225K、その高度は60km程度、乾燥大気の温度勾配は10.6℃/kmである。地球大気では250K、5.9km、9.8℃/kmである。もし金星大気が地球程度に薄かった場合、金星の地表温度は、

225+10.6×5.9=287.5K=(287.5−273)℃=14.5℃

程度であり、地球とほとんど変わらないのである。金星表面が高温である本質的な理由は、金星大気が厚く、金星表面での大気圧が92気圧程度と極めて高圧であることによる。


§3.CO2濃度上昇による暴走温室効果

3−1 地表からの赤外線放射の捕捉

 二酸化炭素地球温暖化説では、大気中のCO2濃度の上昇によって、気温が上昇するとしている。

 その理由の一つは、地表からの赤外線放射のうち、波長15μm付近の波長帯の赤外線はまだ完全に捕捉されておらず、CO2濃度が上昇すれば、さらに大気温度が上昇するというものである。


薬師院仁志「地球温暖化論への挑戦」p.243

 ニンバスの観測結果から、波長15μm付近の地表からの赤外線放射はまだ吸収の余地があるという主張もあるが、実際にはこの観測データには対流圏大気上層からの赤外線放射を含んでいることに留意しなければならない。対流圏大気上層の赤外線放射の平均温度を250Kとすれば、波長15μm付近の地表からの赤外線放射に吸収の余地は無い様に思われる。
 大気中CO2濃度が上昇することによって、地球放射の波長15μm付近の赤外線放射の大気による吸収量が増えて温暖化をもたらすことは無い(詳しくは疑似科学の行方を追跡するブログ、CO2による赤外吸収は未飽和なのか?などを参照。)。

参考 Jack Barrettの研究から
ENERGY & ENVIRONMENT VOLUME 16 No. 6 2005,GREENHOUSE MOLECULES, THEIR SPECTRA AND FUNCTION IN THE ATMOSPHERE

 TheorySurgery氏の論考に紹介されているJack Barrettによるレポート「Greenhouse molecules, their spectra and function in the atmosphere」が重要な示唆を与えています。同レポートからの表を以下に紹介します。


 表は、地表〜標高100mまでの大気の、地球表面からの赤外線放射に対する吸収率を示したもので、「% Absorption」は、各気体分子の赤外線吸収率を示し、「Absorption relative To water vapour = 1」は水蒸気(Water vapour:288K、湿度45%、7168ppm)による吸収を1.000とした場合の比率を示しています。二酸化炭素については工業化以前の大気中濃度285ppmと濃度が倍増した場合の570ppmの吸収率が示されています。「Total」は、水蒸気と二酸化炭素285ppm、メタン、酸化窒素のそれぞれ単独の赤外線吸収率を合計した値です。
 「Combination with 285 ppmv CO2」は水蒸気、二酸化炭素285ppm、メタン、酸化窒素の混合された大気の赤外線吸収率、「Combination with 570 ppmv CO2」は水蒸気、二酸化炭素570ppm、メタン、酸化窒素の混合された大気の赤外線吸収率を示しています。
 さて、Combination with 285 ppmv CO2の赤外線吸収率72.9%はTotalの86.9%に比べて著しく低い値を示しています。これは、広い赤外線吸収帯域を持つ水蒸気とそれ以外の温室効果ガスの吸収帯域の重なりによる影響だと考えられます。この差86.9-72.9=14%の大部分は二酸化炭素と水蒸気との波長15μm付近の帯域における重なりの影響だと考えられます。つまり、285ppmの二酸化炭素のもつ赤外線吸収能力17%のうち実効的に働いているのはメタンと酸化窒素の影響を考慮しても、高々17-(14-1.2-0.5)=4.7%に過ぎないということになります。つまり、波長15μmの帯域においても、水蒸気による吸収の方が圧倒的に大きいのです。
 更に、二酸化炭素285ppmの赤外線吸収率が17%であるのに対して、570ppmの場合は18.5%であり、1.5%の吸収率の増加になります。しかし、その他の温室効果ガスと混合された場合は、二酸化炭素濃度が570ppmに倍増した場合の赤外線吸収率は73.4%であり、285ppmの場合に比較して赤外線吸収率は0.5%しか増加していません。つまり、実際には二酸化炭素の単独の吸収率の増加量の1/3程度しか有効には働かないということです。

 さて、少し視点を変えてみます。Jack Barrettのレポートでは、雲や浮遊粒子状物質は考慮していませんから、大気の窓領域を考慮すると、大気による地表からの赤外線放射に対する吸収率の上限は77.5%(=100-22.5)だとしています。これに対して、僅か標高100mまでの大気で既に72.9〜73.4%が吸収されているのです。大気の赤外線吸収率の上限値に対する比率は工業化以前でさえ72.9/77.5=94%にも達しています。
 仮に次の標高100〜200mの大気が同じ比率で地表面からの赤外線を吸収するとすれば、94+(100‐94)×0.94=99.64%≒100%を吸収してしまうことになります。このように、工業化以前の二酸化炭素濃度であったとしても、温室効果に有効に働く二酸化炭素濃度は既に十分であったと考えられるのです。

 Jack Barrettのレポートから、工業化以前の大気においてさえ既に温室効果に有効に働く大気中二酸化炭素濃度は飽和していると見なしてよく、近年の大気中の二酸化炭素濃度の上昇で気温が顕著に上昇する可能性はほとんど考えられないのではないかと思われます。

(HP管理者からNo.304:2007/11/17より抜粋)

3−2 暴走温室効果

 もう一つの理由は「暴走温室効果」というものである。まず、国立環境研究所のホームページの解説を以下に転載する。http://www-cger.nies.go.jp/qa/4/4-1/qa_4-1-j.html


 将来の温暖化とまったく同じ状況は過去になかったわけですから、裁判における証拠のような、完全に実証的な意味での証拠はありません。しかし、はっきりした「物理学的な根拠」ならあります。そして、その根拠をわかりやすく示すいくつかの証拠もあげることができます。

温室効果が地表をあたためることの「証拠」

 まず、地球の地表付近の温度はどのように決まっているのでしょうか。一般に、物体は、その温度が高いほどたくさんのエネルギーを赤外線として放出します。そして、地表の温度は、地表がうけとるエネルギーとちょうど同じだけのエネルギーを放出するような温度に決まっています(注1)。なぜなら、もしも地表の温度がそれより高ければ、放出するエネルギーがうけとるエネルギーを上回るので、地表が冷えて、結局、エネルギーの出入りがつりあう温度におちつくはずだからです。地表の温度がそれより低かった場合も同様です。

 さて、宇宙からみると、地球は太陽からエネルギーをうけとり、それとほぼ同じだけのエネルギーの赤外線を宇宙に放出しています(図1)。もしも地球の大気に「温室効果」がなかったら、地表は太陽からのエネルギーのみをうけとり、それとつりあうエネルギーを放出します(図1a)。このとき、地表付近の平均気温はおよそ−18℃になることが、基本的な物理法則から計算できます(注2) 。しかし、現実の地球の大気には温室効果があることがわかっています。すなわち、地表から放出された赤外線の一部が大気によって吸収されるとともに、大気から地表にむけて赤外線が放出されます。つまり、地表は太陽からのエネルギーと大気からのエネルギーの両方をうけとります(図1b)。この効果によって、現実の地表付近の平均気温はおよそ15℃になっています。したがって、実際に地球の気温が−18℃ではなく15℃であることが、大気の温室効果が地球をあたためることの「証拠」であるといえるでしょう。

二酸化炭素が増えると温室効果が増えることの「証拠」

 ところで、大気中における赤外線の吸収、放出の主役は、大気の主成分である窒素や酸素ではなく、水蒸気(注3)や二酸化炭素などの微量な気体の分子です。赤外線は「電磁波」の一種ですが、一般に、分子は、その種類に応じて特定の波長の電磁波を吸収、放出することが、物理学的によくわかっています。身近な例としては、電子レンジの中の食品があたたまるのは、赤外線と同様に電磁波の一種であるマイクロ波が電子レンジの中につくりだされ、これが食品中の水分子によって吸収されるためです。

 ここで、つぎのような疑問がわくかもしれません。「仮に、地表から放出された赤外線のうち、二酸化炭素によって吸収される波長のものがすべて大気に一度吸収されてしまったら、それ以上二酸化炭素が増えても温室効果は増えないのではないだろうか?」これはもっともな疑問であり、きちんと答えておく必要があります。実は、現在の地球の状態から二酸化炭素が増えると、まだまだ赤外線の吸収が増えることがわかっています。しかし、そのくわしい説明は難しい物理の話になりますのでここでは省略し、もうひとつの重要な点を説明しておきましょう。仮に、地表から放出された赤外線のうち、二酸化炭素によって吸収される波長のものがすべて一度吸収されてしまおうが、二酸化炭素が増えれば、温室効果はいくらでも増えるのです。なぜなら、ひとたび赤外線が分子に吸収されても、その分子からふたたび赤外線が放出されるからです。そして、二酸化炭素分子が多いほど、この吸収、放出がくりかえされる回数が増えると考えることができます。図2は、このことを模式的に表したものです。二酸化炭素分子による吸収・放出の回数が増えるたびに、上向きだけでなく下向きに赤外線が放出され、地表に到達する赤外線の量が増えるのがわかります。

 その極端な例が金星です。もしも金星の大気に温室効果がなかったら、金星の表面温度はおよそ−50℃になるはずですが(注4) 、二酸化炭素を主成分とする分厚い大気の猛烈な温室効果によって、実際の金星の表面温度はおよそ460℃になっています。これは、地球もこれから二酸化炭素がどんどん増えれば、温室効果がいくらでも増えることができる「証拠」といえます。

「実際にどれだけ温暖化するか?」には不確かさがある

 このように「二酸化炭素が増えると温暖化する」ことの根拠ははっきりしています。ただし、以上の説明は、二酸化炭素以外の要因が温暖化を、少なくとも部分的に、打ち消す可能性を否定するものではありません。たとえば、大きな火山が噴火すれば、火山ガスから生成するエアロゾル(大気中の微粒子)が日射を反射するため温暖化は一時的に抑制されますが、火山の噴火は予測不可能です。また、温暖化にともない雲が変化するなどの「フィードバック」が、現在の科学ではまだ完全には理解されていません。したがって、何らかのフィードバックにより温暖化が小さめにおさえられる可能性は否定できません。これらの要因があるため、「実際にどれだけ温暖化するか」の予測には不確かさがあることに注意しておきましょう。かといって、何らかのフィードバックにより温暖化が大きく加速される可能性も同様に否定できませんので、予測に不確かさがあることは、決して温暖化を過小評価してよいことを意味しません。

(注1) 地表からは赤外線以外にも熱や水蒸気の形でエネルギーが放出されます(顕熱、潜熱とよばれます)が、ここではそのくわしい説明は省略します。これらを考えに入れたとしても、地表温度が高いほどたくさんのエネルギーが放出されます。
(注2) 簡単化のため、地表から放出するエネルギーをすべて赤外線とした場合の計算値です。
(注3) 水蒸気の役割についての説明は別の機会にゆずりますが、水蒸気の存在を考えに入れても、今回の説明の内容に本質的な影響はありません。
(注4) 金星は地球より太陽に近いですが、太陽のエネルギーのおよそ8割が雲などによって反射されてしまうので(地球の場合はおよそ3割)、温室効果がなかった場合の温度はこのように地球よりも低くなります。

小倉義光. 一般気象学(第5章「大気における放射」). 東京大学出版会
柴田清孝. 光の気象学. 朝倉書店(こちらはかなり専門的です)

 江守氏の解説を検討することにする。

@ 実は、現在の地球の状態から二酸化炭素が増えると、まだまだ赤外線の吸収が増えることがわかっています。
 この点については、具体的な説明がなく意味不明であるので、今回はコメントを差し控える。

A もうひとつの重要な点を説明しておきましょう。仮に、地表から放出された赤外線のうち、二酸化炭素によって吸収される波長のものがすべて一度吸収されてしまおうが、二酸化炭素が増えれば、温室効果はいくらでも増えるのです。なぜなら、ひとたび赤外線が分子に吸収されても、その分子からふたたび赤外線が放出されるからです。そして、二酸化炭素分子が多いほど、この吸収、放出がくりかえされる回数が増えると考えることができます。図2は、このことを模式的に表したものです。二酸化炭素分子による吸収・放出の回数が増えるたびに、上向きだけでなく下向きに赤外線が放出され、地表に到達する赤外線の量が増えるのがわかります。
 この江守氏の『二酸化炭素が増えれば、温室効果はいくらでも増える』という主張を温室効果の暴走と呼ぶことにする。

 まず、江守氏の解説の検討に入る前に、地球大気の温室効果について概説する。

 赤外線を吸収するH2OとCO2を主体とする温室効果ガスは地表から放射される赤外線を吸収する。具体的には、気体分子の分子振動の固有振動数に対応する特定波長の赤外線を内部エネルギーとして吸収する。温室効果ガスに吸収されたエネルギーは、対流圏大気では分子密度が高いため、直ちに分子衝突によって大気を構成する周囲の気体分子に運動エネルギーとして再配分される(衝突の確率はN2とO2が圧倒的に高い。)。→温室効果ガスの分光学:無放射緩和過程

 大気中の熱エネルギーの移動形態は三種類である。
@熱伝導:分子衝突による運動エネルギーの受け渡し。
A対流:巨視的な大気の上下運動による熱エネルギーの移動。
B赤外線放射:大気温度に応じた巨視的な大気からの赤外線放射。

 一次的に温室効果ガスに捕捉されたエネルギーは、対流圏大気上層における熱平衡条件と地表面における熱平衡条件を満足した上で、大気が重力的に安定するように、この三種類の形態で再配分される。その結果、平均的にみて既に示した温度減率 6.5℃/km 程度の大気温度の鉛直分布を示す。
 こうして定まった大気温度の鉛直分布に従い、各高度の大気温度に応じて赤外線放射強度が決まり、大気からの赤外線放射のうち、地表に到達するものを温室効果と呼ぶ。赤外線放射強度は大気温度の4乗に比例するため、対流圏下層大気ほど放射強度は強い。

 江守氏は、CO2濃度の上昇によって温室効果は際限なく増加すると主張する。彼が主張するように地表温度を高くするためには、地球大気の保持する熱エネルギー量を多くするか、あるいは熱エネルギーを相対的に地表に近い対流圏下層に集めることが必要である。
 地球を加熱する熱源である太陽放射の入射量は変化しないから、地球大気に保持されるエネルギー量を増やすためには、対流圏大気上層からの赤外線放射量を減らすことが必要になる。赤外線放射強度は温度の4乗に比例するので、対流圏上層の大気温度が低くならなければならない。
 ところが、大気中の水蒸気濃度が変化しなければ、温度減率は 6.5℃/km 程度であり、地表温度が上昇すれば対流圏上層の温度も上昇することになり、赤外線放射強度はむしろ増加しなくてはならない。これは明らかな矛盾である。対流圏上層の放射平衡条件を満足しつつ、地球大気の保持するエネルギー量を増加させるには、後述するように大気の量を増やし、その厚さを厚くすることしかないのである。
 また、熱エネルギーを地表に近い対流圏下層に集めることが出来たとすると、地表温度が上がり、対流圏上層の大気温度が下がることになる。すると、対流圏下層大気は軽くなり、対流圏上層大気は重くなるため、直ちに対流が起こり、温度減率 6.5℃/km を回復する。江守氏の主張は大気の重力的な安定性を無視した空論に過ぎない。

 地球大気の鉛直分布を、大気を複数の層に分割し、各大気層の放射平衡によって説明する多層大気モデルがある。多層大気モデルでは、分割する層数を増やしていくことで地表温度がいくらでも上昇するという欠陥モデルであることが指摘されている。



気候モデルを用いた地球温暖化の将来予測に関する研究 野沢 徹 国立環境研究所(森羅万象学校)

 気候シミュレーションの創始者である真鍋による多層大気に対する放射平衡モデルの計算結果では、対流圏上層大気温度-120℃、地表温度60℃、温度減率17℃/kmとなった(槌田「CO2温暖化説は間違っている」p.164)。この温度減率は地球大気の乾燥大気の温度減率10℃/kmよりもはるかに大きいので、真鍋の計算した大気は極めて不安定であり、あり得ないものであった。これは、赤外線の放射平衡条件だけを考え、重力場における気体の安定条件をまったく考慮しないことによって導かれた誤りである。
 江守氏は、この巨視的な大気に対する多層大気モデルのアイディアを分子レベルの赤外線の多重放射・吸収に持ち込んだようである。まず大きな誤りは、地表からの赤外線放射は温室効果ガスによって一旦吸収されたのちは、温室効果ガスからの赤外線の再放射ではなく、主に分子間衝突によって運動エネルギーとして分配されるのである。衝突確率は、N2とO2が圧倒的に高い。
 彼の言うようにCO2分子間において多重放射・吸収が起こる確率は限りなく小さいと言えよう。もし起こるとしてもCO2の赤外線再放射を吸収する可能性はH2Oの方がはるかに大きい。
 仮に江守氏が主張するように、CO2分子間で赤外線の多重放射・吸収が起こっても、エネルギー量は一次的に捕捉した地表からの波長15μm付近の赤外線放射量に等しく、可能性としては地表方向へ放射される赤外線放射量が増え、宇宙空間へ放出される放射量が減るということであろう。しかし、これは既に述べたように大気の重力的な安定性を乱すものであり、大気の対流運動によって不安定状態は速やかに解消される。
 結局、大気中CO2濃度の上昇は、地表からの波長15μm付近の赤外線放射を一次的に吸収する局面においてのみ意味があるのである。それ以上いくらCO2が増えたとしても、それは赤外線を吸収しない気体分子が増えるのと同じことである。

B その極端な例が金星です。もしも金星の大気に温室効果がなかったら、金星の表面温度はおよそ−50℃になるはずですが(注4) 、二酸化炭素を主成分とする分厚い大気の猛烈な温室効果によって、実際の金星の表面温度はおよそ460℃になっています。これは、地球もこれから二酸化炭素がどんどん増えれば、温室効果がいくらでも増えることができる「証拠」といえます。 
 この点については既に述べたとおり、金星の表面温度が高温である理由は、金星大気が厚く、地表面の大気圧が92気圧という高圧であることが本質的な理由である。
 非現実的な想定であるが、地球のCO2量が激増して地球大気が数10気圧になるようなことがあれば、確かに地表気温は上昇する。しかし、現実的には現在のCO2濃度は0.04%であり、これが2倍になったとしてもまったく問題にならない。
 更に、地球大気においてCO2が増加する場合、Cの酸化に使われるO2は大気中から賄われるため、CO2が増加したのと同じだけO2は減少する。地球大気におけるCO2の増加とは、大気中のO2がCO2に置き換わるだけであり、大気の厚さは変わらない。これによって、大気の平均分子量がわずかに増加し、定圧比熱の違いから、乾燥大気の温度減率がわずかに大きくなることであるが、いずれにしても定量的にまったく問題にならない。

気  体  名 分子量 大気組成 % 定圧比熱 cal/g・℃(m2/s2・℃)

ヘリウム     4.003 5.24×10-4  1.25 ( 5232)
水  素      2.016 5×10-5    3.39 (14189)
窒  素     28.013 78.09      0.25 ( 1046)
酸  素     31.999 20.95      0.22 ( 921)
二酸化炭素   44.010 0.04       0.20 ( 837)
水  蒸  気   18.015 〜3.00     0.49 ( 2051)
乾 燥 空 気   28.966 100.00     0.24 ( 1004)


* 金星に暴走温室効果はあったのか?

 現在の金星大気には水蒸気(水)が少ないことが知られている。その明確な原因は特定されていないが、おそらく金星が地球よりも太陽に近いことから、水蒸気H2Oが紫外線の影響でHとOに分解され、軽い水素を宇宙空間に放出したからではないかと言われている。しかし、水の失われた過程については二つの考え方がある。
 一つは、金星が冷却する過程でH2OとCO2を主成分とする原始大気から直接Hを宇宙空間に放出したという主張であり、この場合金星には海が存在しなかったとする。
 もう一つは、一旦原始海洋が出来た後に、水蒸気の暴走温室効果で海が消失し、再びH2OとCO2の分厚い大気が作られ、その後に大気中のH2Oが紫外線によって分解されたとする。

 地球や金星を含めて、原始地球型惑星は小惑星の衝突エネルギーの解放と揮発成分による原始大気に覆われ、全球がマグマオーシャンに覆われていたと考えられている。原始大気の加熱は太陽放射に比べて惑星の内部熱の惑星表面への放出が圧倒的に大きかったと考えられる。大気は下方から加熱され激しい対流運動が起こっていたはずである。


『生命と地球の歴史』(丸山・磯崎,1998,岩波新書)p.19

 上図に示すように、原始海洋の出来る前の地球型惑星の大気の中では、H2OとCO2を主成分とする大気が激しく対流し、大気上層で冷却され水滴あるいは氷粒となった水が地表に向かって落下する途中で再び水蒸気となり、地表面に到達することなく対流していたと考えられる。


http://www.me.sophia.ac.jp/~takai/mate-phase.pdf

 上図は水の状態図である。水は気圧が上昇することで沸点(液体と蒸気の境界線)が上昇するが、臨界点の温度374℃を越えると液相は消滅し、液体の水は存在できない。地表温度が374℃以下になった段階で雨は地表にまで到達し、原始海洋が形成され始めることになる。
 原始海洋の表面温度はおそらく200℃を越えていたと思われるが、大気は相変わらず主に下方から加熱され、激しい対流を続けたと考えられる。下層大気上層からの熱の放出は太陽放射の入射をはるかに超え、地表の冷却が急速にすすんだと考えられる。

 もし金星に地球規模の海洋が形成され、大気圧が数気圧程度にまで一旦減少した場合、たとえ地球の2倍程度の太陽放射を受けたとしても、水蒸気の温室効果の正のフィードバックによる暴走によって再び海水をすべて気化させるほどに惑星表面温度が高温になることは非常に考えにくい。原始海洋が形成される以前、あるいは地球に比べて小規模な海洋の段階で金星大気から水蒸気が失われたと考える方が無理が無い様に思える。
 特殊な条件によって、かつて金星において温室効果の暴走が起こったという可能性を否定は出来ないが、それはあくまでも惑星形成初期の段階による出来事であり、小惑星衝突などによる莫大なエネルギー供給が無い限り、現在の地球において水蒸気の温室効果の正のフィードバックによる温室効果の暴走で大気圧(厚)が顕著に増大することは考えられない。

註)暴走温室効果
 大気上端からの宇宙空間への赤外線放射による放熱量には、地表温度の上昇に対してある極大値があり、それ以上に地表温度が上昇すると逆に放熱量が減少するという数値モデル計算結果がある。放熱量の極大値(=射出限界)よりも大きな入力=太陽放射を受けると大気温度は限りなく上昇するという『暴走状態』になるとされ、これを暴走温室効果と呼ぶ。
 灰色大気に対する簡単な数値計算からは、有効な平均的太陽放射強度が400W/m2程度で暴走状態になるとしているが、これを実証的に確認する術はない(地球における現実の有効な太陽放射入射量は、反射率30%とした場合、239W/m2)。この仮説が正しいものとしても、現在の地球において暴走温室効果が起こる可能性はない。



§4 結論

 これまでの議論で明らかなように、地球大気の特殊性は常温で容易に液相と気相の相変化を起こす水の存在によって特徴づけられている。対流圏下層の物理化学現象である気象現象は水蒸気の存在による大気の活発な対流運動に起因している。更に、大気の上下運動によって、これを補償するためのに大気の水平運動が起こり、大気の水平方向の運動は地形の影響により上昇・下降をともない、これによってまた大気中の水蒸気は容易に相変化し大気に放熱したりあるいは吸熱を行う。また、雲の発生機構も重要である。
 気象現象において決定的に重要な働きをする水あるいは水蒸気の極めて複雑な挙動を現在の気候シミュレーションモデルはまったく再現することが出来ないのである。気象現象において決定的に重要な要素を正確に表すことが出来ずに、些細な要素である大気中二酸化炭素濃度の影響によって気温変動を解釈しようとする試みはまったく愚かな発想である。
 更に地表における生態系の活動も水循環などに密接に関連しており、気象現象を更に複雑にするが、無機的な気象現象と生態系の関連を再現することはまったく不可能なのである。

 現在の極めて幼稚な気候シミュレーションモデルを用いて、将来の気候を予測するなど、ほとんど占いに等しい愚行である。

(2007/04/23)
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新規作成:Apr.1,2004
最終更新日:Feb.9,2009