石油代替エネルギー供給技術の有効性 | |
§2.石油代替エネルギー供給システムの評価 2-1 幾つかの留意点 2-1-1 エネルギー供給の『電力化』は石油利用効率を悪化させる まず初めに、現在構想されている石油代替エネルギー技術のほとんどが発電技術であることから、エネルギー供給の『電力化』について触れておく。昨今、電力会社は、『環境に優しい』として、オール電化を謳っている。具体的には調理用のヒーターと電気温水器の導入が中心である。 電気は非常に優れたエネルギー形態であり、利用側の器具の工夫によって、照明・動力・電子機器・熱源など色々な用途の利用が可能である。現在オール電化の謳い文句の下に進められている低温熱源としての利用について考える。 火力発電のエネルギー産出比を0.35程度とすると、火力発電システムに投入された石油燃料の燃焼エネルギーのうち65%は発電段階で環境中に廃熱として散逸する。こうして供給された電力によって湯を沸かす場合、使用段階において更に環境中への熱の散逸があることを考慮すれば、有効に利用できる熱エネルギーは、投入された石油の熱エネルギーの30%程度と考えられる。 これに対して、ガス湯沸かし器では、使用段階における熱効率は90%を超えているという。電気温水器は、どう贔屓目に見ても、エネルギー効率においてガス湯沸かし器の半分以下でしかない。 温水器の例に限らず、一般的に燃焼による熱エネルギーを運動エネルギーに変換し、これによって発電した電力に何らかの仕事をさせるという多段階のエネルギー変換を伴う迂回過程の場合、燃焼による熱エネルギーをそのまま利用する単純なシステムに比べてエネルギー効率は著しく低下する。エネルギー供給の『電力化』は、それ自身が石油エネルギー利用効率を低下させる。 2-1-2 エネルギー・コスト算定上の留意点 あるエネルギー供給システムのエネルギー・コストを算定する場合、そのシステムを運用するために必要な全ての関連事業・付帯設備を含め、そのシステムの製造から運用・廃棄にいたる全段階におけるエネルギー投入を対象としなければならない。最近流行の言葉で言えばLCA(=ライフサイクル・アセスメント)である。 理想的には、システムを構築するために投入される原料資源の採掘・運搬から、全ての加工・製造・建設工程(工場設備の償却分も含む)、完成後の施設運用・保守・点検、そして耐用期間終了後の廃棄工程までに投入される全てのエネルギーを積算しなければならない。しかし、企業からの情報公開の制限もあり、こうした積算によるエネルギー・コストの推定は、往々にしてエネルギー投入量を過小評価する可能性が高い。 そのため、石油代替エネルギー技術を評価する場合、一見『科学的』に思われる、公開されている研究室レベルの理論的な発電効率あるいは、発電そのものに直接係わるエネルギー投入だけを問題にする結果、現実の運用では考えられない高い変換効率を推定してしまう危険性が高い。石油代替を進めようとする者にあっては、むしろ恣意的にこうした操作によって高い変換効率を算定しているとしか思えないデータが散見される。 現在の工業生産は、原料資源の採掘段階からすべて石油エネルギーの消費によって動いている。原料資源とは元をただせば、ただの石ころである。原料資源の価格とは採掘に要したエネルギー投入量を反映していると考えられる。また原料の運搬費用は、生産地から消費地までの距離、つまり運搬手段に投入されたエネルギー量を反映していると考えられる。工場生産・施設建設においても同様である。これらを考えると、厳密なエネルギー・コスト分析には多くの困難があるが、概略のシステム間の比較において、むしろ経済的な生産コストによる比較が、かなり実態に近い結果を与えるものと考えられる。 二酸化炭素地球温暖化脅威説批判 近 藤 邦 明氏 『環境問題』を考える より |
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更新履歴 新規作成:Apr.1,2004 最終更新日:Mar.29,2006 |
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