環境問題と公共事業 | |
2. 環境問題からみた土木技術の限界 現在の土木構造物の主要な材料は鉄とコンクリートです。自然環境の中に鉄とコンクリートで構造物を作るということは、構造物を作る前の自然環境の中で営まれている無機的・有機的な物質循環を部分的に破壊し、物質循環の阻害要因を自然環境の中に固定することです。構造物を作ることによって、建設場所およびその影響を受ける周辺の自然環境は急激にバランスを失い、不安定な状態になります。その結果、物理的な環境の変化に対応した新たな「安定した自然環境」に遷移していきます。 構造物を作るという意味における土木技術は既に十分成熟した技術になっています。逆にあまりにも土木技術の持つ力が大きくなったために、自然環境に対する配慮を怠り、人間社会の機能的な要請から安易に自然環境を改変する傾向にあります。 土木構造物の建設という工業的な技術の特異性は、自然環境と直接対峙する点にあります。ここで言う自然環境とは構造物を建設する場所、あるいは構造物を建設することによって何らかの影響を受ける周辺地域の地形、地質ないしその地下構造、水循環、気象条件等の無機的・物理的な条件に加えて、そこの生態系、あるいは生態系を中心とした物質代謝も含めてその対象になります。 しかし、多くの要素が相互に複雑に関連した自然環境の全体像を的確に把握することは大変難しいことです。自然環境を改変することによる変化を的確に予測することはそれ以上に難しいことです。分析的な手法で個別事象のデータを最大限収集しても、それで自然環境を把握したことにはなりません。細分化された分析的な情報と全体としての自然環境の関連を的確に表現するということは非常に難しいことです。情報が膨大になればなるほど、個別事象相互の関係は複雑になり、全体像としての自然環境をどう評価すべきか、ますます混乱が深まると考えられます。 土木構造物の建設のような、自然環境という大変複雑で微妙なバランスの上に成り立っているシステムの物理的な改変を伴う事業は、その影響を的確に予測することは技術的な限界があります。土木構造物の規模が大きくなるのにしたがって、影響を受ける範囲は時空的に大きくなり、ますますその予測は困難になると考えなければなりません。 現在の公共事業・土木構造物建設の計画・設計段階において、構造物に要求される機能と、それを提供するための構造物をいかに作るかという技術的な問題についての検討はされても、その事業によって環境にどのような影響を与えるかという視点からの検討はほとんど行われていません。大規模事業では環境影響評価が行われていますが、十分に機能していないのが実情です。 環境問題を考えるとき、公共事業の計画・設計段階で、出来る限り環境に与える影響を検討し、悪影響を回避することが必要です。しかし、どのように綿密に影響予測を行ったとしても事業規模が大きくなれば予測不能なリスクが伴うことを認識して、安易に巨大事業を行わないようにすることが必要です。 二酸化炭素地球温暖化脅威説批判 近 藤 邦 明氏 『環境問題』を考える より |
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更新履歴 新規作成:Feb.9,2009 最終更新日:Mar.13,2009 |
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