前頁 次頁 目次 歴史 須川土地改良区 須川ホーム
明治四十三年ノ水害
本年八月十四日大洪水、北上川・磐井川氾濫、本村内浸水戸数実ニ五十六戸ナリキ。此ニ於テ本村ハ、十五日ヨリ十七日マデ三日間、罹災民ノタメニ食料焚出シヲナシ給與シタリ。其ノ戸数五十六戸、人員二百六十五人ニシテ、費用金六十六円七十五銭ヲ要シタリ。
然ルニ九月四日ニ至リ、又々大洪水アリ、本村内浸水家屋五十二戸、前回ノ洪水ニ比シ遜色ナク此ノ両度ノ洪水ニテ作毛ハ田畑共皆無ニ帰シ、損害実ニ大ナルモノアリ。
此ニ於テ、岩手縣知事堤定治郎氏ハ、罹災状況実地視察ノタメ来村セラレ、親シク実情ヲ視察調査セラレタリ。而シテ罹災民救助ノタメ岩手縣罹災者救助基金ヨリ金五百六拾円七拾五銭五厘ヲ交付セラレタルヲ以テ、本村ハ之レヲ左ノ如ク支出シ、以テ罹災民ヲ救助シタリ。
一、金五拾九円八拾弐銭八厘 浸水家屋五十二戸 人員弐百参拾九人ヘ焚出給與費
一、金参拾九円四拾銭 罹災者小屋掛材料費支給分五戸分
一、金六拾弐円弐拾七銭弐厘 大麦種子購入支給弐拾壱戸七名 七斗八升四合代
一、金弐百八拾五円五拾弐銭五厘 罹災者ヘ飯米給與代（米壱石拾五円）
一、金参百壱拾参円七拾銭 罹災者ヘ副食物給與代
浸水田・畑作毛ハ皆無トナリタルヲ以テ、政府ハ當年ノ地租ヲ免除セラレタリ。其ノ免除反別、左ノ如シ。
一、田 四拾参町弐反八歩
一、畑 壱百壱拾四町参反五畝弐拾参歩
大正二年ノ水害及凶作
本年挿秧時ヨリ、気候順ヲ失シ、秋収期ニ至リ寒冷早ク至リシヲ以テ、遂ニ充分ナル結実ヲ見ル能ハズ、大減収ノ厄ニ遭フニ至レリ。加之當年八月二十七日、北上川氾濫大洪水アリ、浸水三日間ニ渉リシヲ以テ、作物悉ク皆腐敗シ終レリ。當時、本村当局ノ調査ニ依リ郡長ヘ報告セル凶作状況、左ノ如シ。
大正二年凶作状況報告
一、凶作ノ程度
イ、本村前年ノ収穫ガ年々ニ比シ減ノ割合
米 五割ノ減
大豆 六割ノ減
麦 三割ノ減
ロ、農民疲弊ノ状況
客年ノ暴風雨並ニ凶作ノタメ、中産以下人民ノ困難ニ陥リタルモノ即ニ大事ニ及ベリ。殊ニ本村大字三関狐禅寺等ノ水害地ノ如キハ、一粒ノ穀菽ノ貯ヘナク、衣食ニ窮セルモノ少ナカラズ。
ハ、商工業上ニ及ボセル影響アラバ、其ノ状況、中産以上ノ村民ニハ収穫減少セシニモカヽハラズ、米価ノ暴落セシタメ、金融畢逼シ、ヒイテ究ニ迠モ困難ヲ大ナラシム。
物価労銀ニ及ボセル影響
物価高低ノ有無及其割合 三割減
此ニ於テ、政府ハ、農民困難ノ実情ヲ察知セラレ、左ノ如ク地租免除ノ恩典ヲ與ヘラレタリ。
一、田 五拾参町参反拾四
一、畑 百拾壱町壱反参畝拾参歩
本縣凶作ノ事実、天聴ニ達スルヤ、忝クモ天皇陛下ニハ、罹災救済ノ思召ヲ以テ恩賜金下賜ノ恩命アリ。本村ハ金六十円也ノ配当ヲ得、之レヲ三十九戸壱百七十人ノタメニ飯米ヲ購入シ給與救済シタリ。又、侯爵松方正義氏等ハ災害救済会ヲ組織セラレ、廣ク同情ニヨリ義捐金ヲ募集セラレタリ。其ノ本村ニ寄贈セラレタル収支計算等ヲ掲グレバ、左ノ如シ。
【収入ノ部】
一、金九百九拾五円也 救済会寄贈ノ義捐金
一、金拾参円也 海外同胞ヨリノ寄贈義捐金
計壱千八円也
【支出ノ部】
一、金四拾七円参拾壱銭五厘 飯米購入給與
一、金参円七拾銭也 窮民医薬料
一、金八拾七円弐拾銭也 肥料種苗購入給與
一、金壱拾六円九拾銭也 附加工賃トシテ給與
一、金壱百六拾四円也 農具購入給與
一、金弐拾銭也 通信其ノ他雑費
合計六百八拾九円弐拾壱銭五厘也
差引残金参百拾八円六拾六銭五厘也 本村罹災救助基金ニ繰入ル。
當時本村村長ヨリ松方候ニ贈リシ感謝礼状、左ノ如シ。
謹啓
客年ノ風水害并ニ凶作罹災民ノ困難一方ナラザルモノ有之候ベシ處、貴会ノ御篤志ニ依リ、同胞諸賢ヨリノ甚大ナル御同情ノ籠レル義捐ノ金品、御送付被成下、罹災民ノ感激、此ノ事ニ候。此ノ處ニ本村罹災民一同ニ代リ厚ク右御礼申述候。 敬具
追テ各寄贈者ニハ貴職ヨリ此ノ旨御伝達被成下度 御依頼申上候
大正三年四月二十日
岩手縣西磐井郡眞瀧村長 熱海 懿
東北
九州 災害救済会総裁
侯爵 松方正義殿
前頁 次頁 目次 歴史 須川土地改良区 須川ホーム
底本：「復刻 眞瀧村誌」
2003（平成15）年6月10日発行
発行者 眞瀧村誌復刻刊行委員会
代表 蜂谷艸平
2004年3月10日作成