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第七章 学 事
第一節 総説・学校沿革
維新前ニ於テハ、別ニ定マリタル教育機関ナク、所謂寺子屋教育ニシテ、殊ニ本村ニ於ケル教育ハ、寺子屋教育ニ於テモ低級ノモノタリシガ如シ。即チ、特別ニ師ト称シテ手習師匠ヲ勤ムルモノナカリシヲ以テ、近所隣リノ物知リ（少シク書ヲ読メル者）ニツキ、冬期間其ノ外農閑期ニ於テ、習字・算盤ノ稽古ヲナセルニ留マリシガ如シ。サレバ、一箇所ノ生徒ノ数モ五、七人。多キモノニシテ十四、五人ニ過ギズ。只、狐禅寺ニ於テハ、從来ヨリ修験耒善院ノアルアリ。又、文化ノ頃ヨリ笠原氏ノ此ニ住居スルアリテ、専心教育ニ從事シタルヲ以テ、其成績梢々見ルベキモノアリシナリ。
維新後ニ至リ、明治二年、教育ニ関スル論達ノ発セラレタルアレ共、当地方ニ於テハ、未ダ行ハルルニ至ラズ。其ノ普及ヲ見ルニ至リシハ、実ニ明治五年学制発布以後ナリトス。
本村小学校ノ創立ハ、実ニ明治五年十一月十一日ナリトス。即チ、明治五年七月、初メテ学制ヲ布カルルニ及ビ、從来、村々ニ於テ村塾ヲ開キ教授ヲナシ居リタルモノヲ、直チニ公立学校ト認メ、教師ハ概ネ從来ノ教師ヲ任用シタリト雖モ、学力不十分又ハ素行修マラザルモノハ、官許セザリシナリ。
当時、真滝村内ニ於テ認メラレタルモノ、左ノ如シ。
狐禅寺塾 笠原三安教授
滝 沢塾 佐々木某教授
鬼死骸塾 新沼 隆教授
牧 沢塾 伊藤清徳教授
当時、第八大区中ノ村塾教師ハ、一統戸長役場ニ召集セラレ、此ノ如キ辞令ヲ交附セラレタリモノナリトイフ。
辞令書ハ、縦四・五寸巾八・九寸大ノ、紙貭ハ和紙、大奉書様ノモノニ書キタルモノ。俸給額モナク、戸長ノ氏名ノ記載モナク、只職名ノ下ニ実印ヲ押シタルモノナリ。当時ノ辞令ハ、総ベテカカルモノナリシトイフ。
俸給ヲ記入セザルコト明治十年頃迄ナリシト、此ノ儀ニ付新沼氏ニ聞クニ、任用セラレタル教師ハ、コノ辞令ヲ携ヘテ其ノ村ノ証人ノ許ニ行ク時ハ、其ノ証人ト相談シテ、相対的ニ俸給ヲ取リ極メタルモノナリシト云フ。
而シテ明治六年ニ至リ、初メテ学制ニヨリタル小学校ノ設置ヲ見タリ。当時、水沢縣ニ於テハ、一関町ニ伝習所ヲ設ケ、村塾教授ノ統一向上ヲ期スルタメ、学制上必要ナル科目ノ講習ヲナシタリ。
明治六年七月十八日、左ノ通リ改称
一、第八大区第二十一中学区 狐禅寺小学校（修業年限 四ヶ年）
一、第八大区第二十一中学区 滝 沢小学校（修業年限 四ヶ年）
一、第八大区第二十一中学区 鬼死骸小学校（修業年限 四ヶ年）
一、第八大区第二十一中学区 牧 沢小学校（修業年限 四ヶ年）
大学区ノ分別左ノ如シ
第八大区
青森県、福島県、水沢県、岩手県、秋田県、山形県、宮城県、磐前県（註１）ノ八県デ青森県ヲ以テ大学本部トス。教師ハ滝沢小学校ニ新ニ伝習所ヲ修業シタル千葉善治、佐々木某ニ代リ、赴任シタル外交迭無シ。當時ハ、校舎ハスベテ寺院又ハ民家ヲ僦用シタリ。
一、狐禅寺小学校ハ光西寺
一、滝沢小学校ハ長寿寺（醫王山）
一、鬼死骸小学校ハ新沼隆宅（在字牧田）
明治十二年教育令ニヨリ左ノ通リ改正ス
一、公立狐禅寺小学校 修業年限 初等科三年
一、公立滝 沢小学校 中等科三年
一、公立眞 柴小学校 高等科二年
本村ニテハ中等科ヲ置カザルモ随意修ムルモノアリタリ。
明治十九年小学校令発布翌二十年四月ヨリ之レガ実施トナル
一、狐禅寺尋常小学校（公文ノ誤記ニテ仝上名ノ指定ヲウケタリ）
一、滝沢簡易小学 （小学校ナラズ簡易ノ附サレタルモノハ校ノ字）
一、眞柴簡易小学 （ナキヲ正シトス修業年限三ヶ年）
明治二十三年改正小学校令ニヨリ、簡易科ヲ廃シ尋常高等ニトナシ、又補修科ヲ設クルコトトナレリ。
一、狐禅寺尋常小学校 （修業年限 四ヶ年）
一、滝沢尋常小学校 （修業年限 四ヶ年）
一、眞柴尋常小学校 （修業年限 四ヶ年）
明治二十五年四月、牧沢部落ノタメ細田ニ眞柴小学校分教場ヲ設置シタリ。
明治二十六年四月、滝沢道目木ニ滝沢小学校分教場ヲ設置シタリ。
之レヨリ先、明治二十二年、三関部落本村ノ所轄トナルヤ、児童ハ狐禅寺ニ教授ヲ受ケタルモ、明治二十五年八月、愈々独立ノ三関尋常小学校ノ開校ヲ見ルニ至レリ。
補修科及高等科ニ就イテ
修業年限四ヶ年ノ尋常小学校修学ノ程度ニテハ、不足ナルヲ以テ、高等科又ハ補修科ヲ設置スベキ議ハ、既ニ明治二十五年ヨリアリシガ如シ。
設置ノ議ガアリシモ、経費ノ点ニ於テソノ設置ヲ見ザリシモ、仝二十六年補修科ヲ設置セルモ不許可トナル後、二十七年、狐禅寺ニ三ヶ年ノ補修科、三十一年ニ滝沢校ニ二ヶ年ノ補修科、三十二年ニ眞柴校ニ三ヶ年ノ補修科ノ設置アリタリ。
明治三十四年四月、狐禅寺・滝沢両小学校ノ補修科ヲ廃シ、共ニ修業年限四ヶ年ノ高等科ヲ併置セリ。四十一年四月、義務教育年限六ヶ年ニ延長セラルルヤ、共ニ高等科ノ修業年限ヲ二ヶ年トシタリ。尚、明治三十七年三月ニハ、分教場ヲ廃止シ、四十一年ニハ三関尋常小学校ヲ廃止シタリ。
三関尋常小学校及分教場廃止
以上記述シタルガ如ク、本村普通教育ハ、明治五年以来、長足ノ進歩ヲナシ、從ッテ経費ノ負担モ多ク、分教場等ニハ善良ナル教師ヲ聘セラレザル事情アリ。且ツ又、教育上統一ヲ欠キ、其ノ成績至ッテ不良ナルヲ以テ、此ニ分教場廃止ヲ決議シ、愈々明治三十七年三月三十日岩手縣告示第二七四九号ヲ以テ、道目木、牧沢ノ二分教場ハ廃止セラレ、各其ノ本校ニ通学スルコトトナレリ。
又、三関尋常小学校通学区域ハ、狐禅寺ト接続シ、土地平坦ニシテ狐禅寺小学校ニ至ル距離最遠二十四五町ニ過ギズ。且又、從前、同校ニ通学シタル事実モアレバ、之レヲ廃止シ併合スルコトニ決シ、明治四十一年四月一日限リ廃止シ、狐禅寺尋常・高等小学校通学区域ニ編入シタリ。
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註１：明治４年の廃藩置県時に置かれ明治９年の若松県、福島県との合併で福島県に併合された。現在の福島県浜通と宮城県亘理郡、伊具郡、刈田郡を含む地域。
底本：「復刻 眞瀧村誌」
2003（平成15）年6月10日発行
発行者 眞瀧村誌復刻刊行委員会
代表 蜂谷艸平
2004年3月10日作成