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第九節 方言・訛語(大正四年六月調)
本村ニ普通云ワルルガ方言・訛語ヲ蒐集シ、左ニ列記スベシ。編者ノ不識或ハ其ノ当リヲ得ザルモノ又ハ蒐集ノ足ラザルモノモ多カルベシ。諸賢ノ批正ニヨリ、後ニ訂正ノ期モアランカト此ニ採録ス。
一般ノ誤ニツキテ
一、「し」「す」「ち」「つ」の発音がはっきりしません。
例えば、イシ(石)をエス、ナシ(梨)をナスと云ふが如し。
二、「じ」「ず」「ぢ」「づ」の発音も又はっきりしません。
三、「い」というべきを「え」ということが多くあります。
例へば「たいそー」(体操)をタエソウ、「カイグン」(海軍)をカエグンというが如し。
四、語尾に「コ」をつけること。
例へば「犬コ」「猫コ」「糸コ」「筆コ」の如し。
五、ゾンザイに聞える(乱暴に聞える)言葉が多い。
例へば「コロンダ」を「サライコロンダ」、「ツブレタ」を「サライツブレタ」、「早クコイ」(又はズンズンコイ)を「ズーズートコー」又は「ゴークトキャーガレ」、食へ」を「クレアエ」(甚しきに至りては「クレアエガレ」)などたくさんあります。
六、語調はだるい。
例へば「サウデス」を「ソオーテァースー」又は「インーニャー」と。
七、ぺといふこと。
例へば「行キマショウネ」を「エグマスペナ」、「ヨイデショウ」を「エガァスペー」、「サウデショウ」を「ソーデアエスペー」の如し。
八、話をするに上・下の区別はない。
例へば、呼ばれたる時の返事に
弟妹に対しても アァー ウー
父母に対しても アァー ウー
お客さんに対しても アァー ウーの如し。
真滝地方の方言
(あ)の部
不正 正 不正 正
あせ おさい |あんこ 若い者
あくたれ いぢ悪しき |あぶく あは(泡)
あくと かがと(踵) |あさっぱら 早朝
あくしょ くしゃみ、くさめ |あばれ 乱暴
あんだ あなた |あそこ 彼処
あくたい わるくち |あけぽぽ とんぼ
あんまり あまり |あじゃら あらい
あべ あゆめ(歩め) |あぐ 歩み
(い)の部
いりこ 奥 |いんにゃ いや(否)
いまっと もっと |いびる 焼く
いつっに とくに(疾に) |いびねる
いけどしやう おとな |いたまへ 板の間
いつはたらき 一人並 |いぢい 窮屈
いっぱい 二合五勺 |いぢくる 弄ぶ
(う)の部
うざねはく なんぎする |うざね なんぎ
うらつぺ 先端 |うんにゃ いや、いな
うどい ばかもの、うすばか|うましない みにくい
うすわい 不正の利 |うせない うるさい
うんと たくさん
(え)の部
えぐ 行く |えけしかない 嫌ふこと
(お)の部
おっかない おそろしい |おたち 食物を強ふること
おがる 成長する |おがだ 妻
(か)の部
がせん ありません |かんます かきまわす
かんじょ かはや(厠) |からこびん 頭
がをる よわる(弱) |かぶれ かび
がす あります |がんじやう 老馬
かみすり かみそり |かいすや 裏
かもりかか かうもり(蝙蝠) |からけばち 摺鉢
がんこ あたま |かたぴた 一方
かたこびん かたわら(側) |がんがり 鋸
(き)の部
きぎ きね(杵) |きによな 昨日
きつぱづ 切端(きりはし) |きんか つんぼ(聾)
ぎめる いぢめる
(く)の部
くたばる しぬ(死ぬ) |くびた くび
くりみ くるみ(胡桃) |くさもち よもぎもち
ぐいら ぐつと
(け)の部
けなり 羨しい |げあらご おたまじゃくし
げっそり ほんにゃり |けつがる 居る
けろ 呉れ |けったぐる 蹴る
けつ しり(尻) |げほう 愚鈍
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底本:「復刻 眞瀧村誌」
2003(平成15)年6月10日発行
発行者 眞瀧村誌復刻刊行委員会
代表 蜂谷艸平
2004年3月10日作成