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 第十一節 俗謡

小謡

 宴会ノ際ニハ先ズ必ズ小謡ヲ歌イ祝フコト、例トナリ居レリ。サレバ若者共(男子)ハ、陰暦正月ノ休日ヲ利用シ、小謡ニ秀デタル者ヲ聘シテ師トシ、二週間内外ノ稽古ヲナスヲ慣例トス。謡ノ流儀ハ、喜多流、高安流ニシテ、喜多流ハ其ノ大部ヲ占ム。祝儀ノ種類ニヨリ、歌フベキ小謡自然定リ居ルガ如シ。之レヲ左ニ分類シテ掲グ。 ◎婚礼儀式ノ時
  老松、養老、高砂、松竹
◎大盃ノ時
  春栄
◎新宅ノ時(凡テ建物ヲ新築シタル時ニ用ユ)
  弓八幡
◎普通何祝ニモ用ユル謡
  高砂、養老、富士山、月宮殿
◎山遊花見ノ時
  鞍馬天狗
◎宴会終ル時
  難波

祝儀振舞ニ歌ハルモノ
 祝儀振舞、宴酣ナルニ至ルト、時期ヲ見計リ、男ハ威儀ヲ正シテ先ツ小謡ガ始マルト、一同大キナ声デ和スルノデアル。小謡ガ終ルト、女共(敢テ女ト限リタルニアラザレドモ大概ハ)、拍子シテ拍子ヲ取リ、優美ニシテシカモ悠長ナル節ノ「めでたうれし」(さんさしぐれとも云ふ)ヲ歌フ。一同拍子ヲ取リ歌フノデアル。其ノ悠長閑雅、何トモ云エナイ歌詞モ又目出タイモノバカリデアル。

   めでたうれし(さんさしぐれ)
一、さんさしぐれか かやのの雨か 音もせで来てぬれかかる(ショーガイナー)
一、めでたうれしや思うこと叶た 末に鶴亀五葉の松
一、御前百迄わしゃ九十九まで 共に白髪の生えるまで

   おいとこ
 おいとこ節も又一同拍子合せてよく歌われる歌である。「めでたうれし」と、之の「おいとこ」は、祝儀では必ず歌われるものといふて差支ない。「おいとこ」節も、中々優美な而して拍子のよい歌である。だから之れが歌い始まると、踊の心得ある者はじっとして居られないで踊り始めるのだ。この踊りも又優美でやさしい。

   甚句
 次ニ良ク歌ハレルノハ甚句節(俗ニじんこぶしト云フ)デアル。之レハ、歌ウ様ガ早ク勇壮活溌ナ所ガアリ、田園風・田舎風ヲ発揮シテ居ル。之レヲ聞クト、何トナク頑丈ナ朴訥ナ風ガ、自然、想ヒ起サル。田舎トシテハ中々ニ捨テ難イ歌デアル。而シテ、跳ネ出ス踊リ出ス快ノ至ルハ、此ノ歌ノ出タ頃ハ最中デアル。歌詞ハ、都々逸文ナレバ何デモコノ曲ニ合フカラ、異類無類ノ歌ガ歌ハレル。歓極マッテノ事ナレバ、平気デ聞ク時ハ、如何ヤト思フ歌詞モ少ナクナク謡ハレルガ、之ガ又面白イノダ。弊害風俗壊乱等ハ、時ト場合ニヨルノデ、カカル宴席デ、田舎ノあんこ・あねご達ガ天真爛漫デ歌フノダカラ、少シ位如何ト思フ歌詞ヲ歌ッタ所デ、弊害ナドノ伴フモノデナイ。其ノ普通ノモノヲ十余点挙ゲテ見様。

一、じんこ踊りがかど迄来たが ジサマ(祖父様)出で見よ(サ、とかホニとか入れる)孫連れて
一、躍り出てくる座敷が狭い 狭い座敷もホニ広くなる
一、踊りはねるも三十が盛り 三十過ぎればホニ其の子が踊る
一、踊り踊らば品よく踊れ ひんがよければホニ嫁にする
一、酒も呑むべし道楽もすべし しまる節にはホニしまらんせ

   餅搗キ歌
一、餅搗きはな、楽だと見せて楽でない ハヨイヨイ 何仕事や仕事に楽があらばこそ
一、搗けた餅や何時迄搗いて慰むや・・・明朝のや 夜明の鐘の鳴る迄や
   (ハヤレ よい嬶持ちやげろ身上の為めだよ よいよいよい)
一、一関や台から見れば長い所・・・長けれとな 一夜の宿を取りかねた
一、山目や柳の葉よい狭い町・・・狭けれどな 一夜の宿は此処でとる

   奴かに
一、奴さんよ、どちらえ行くえ いや御旦那のお迎えに さても寒いのに
  わし一人、雪の降るのも一厭はずに お供はつらいな、いちも
  御江戸で 高はしょり アンアン コリャコリャ ヤーアンアン
  誠女郎買ひなし
一、お寺さんよ、どちらへ行くえ いや御檀家に サッテモ切れたる
  けさ衣、珠々 つまいて御経を読む いや呑むから足らない
  打つから足らない とっても足らない ゆうべもとられ
  昔思ひはこちらにくえ アンアンコリャコリャ コリャヤーアンアイ
  誠女郎買ひなし

   中おくに
一、さてもやさしや鴬とりは、今年はしめて 伊勢参宮
  伊勢より広い国もなし、一夜の宿をとりかねて 梅の小枝に宿をとる
  梅をまくら 葉をござに、月をながめて ふみを読む
  名所みたくば松島ござれ 五大堂の橋のらんかんに 腰をかけ
  沖をはるかと眺むれば 広きかもめは道づれて、又道連れて
  むじましく 足をろかいに身をふめむ 雨のはかひを帆にかけて
  おしつおされつ 舟ゆさん

   松づくし
一、舟のその名は様々あれど 先づはしめには大船が こがね柱を
  ゆり建てゝ あやとにしきを帆にかけて はるか沖をこぎくるや
  あれこそほんの宝船 走るはようえぞ アゝ面白や、アゝうれし
一、稲の其の名さまざまあれど 先づはしめには早せの雀知らず
  に穂を出でし、じゃこう香に丹波しね ひでりに強し白しねよ
  奥さに育ち奥しねよ、みのるが里のうれしさよ

   いよぶし
一、花の御江戸の役者の名寄せ 一に市川団十郎、女形では
  くじゃくさん、にがしきもり あらしの吉三郎
  中にとしようは色男 いつでもお化けの菊五郎
  どうげい役者の おどりの名人歌右ェ門 チョイト見さしやんせ

   新内ふし
一、仕事にかへてな送るふみ あいさつあるのがあらのがな
  白紙ついやし片思い ほんに思いがいやに テチンガチン いとやせの
一、思の思はれ合いひなづむ、わたしとお前の恋仲を そばから見ずして
  さしたがる ひしゃく男の イヤドテチガチン つらいぐえ

   大津絵
一、此頃ー此頃はなぜ 御前は不挨拶、何かおむねにお障りか
  そうなら そうじゃといはしやんせ そうとははしは露知らず
  今日は今日迄こがれ居る かみかみさんえも願をかけ
  塩断ち穀断ちまでして居るに それでもお前はうは気をするならば
  其の身を其の儘しておかの

   地割り(一)
  オーヤン ハヤサイナ オーヤン ハヤソーナラバ
  カタルゾヨ オーヤン
  そもそも 餅の根源は オーヤン 銭持ち金持ち宝持ち・・・・
  御家を祝ふ千代八千代・・・千代千年のお茶のこの・・・
  萬十年も栄えんと・・・お家の寿 くちやえは・・・ざもちと見せて
  取持ちの・・・大根餅はまじ鏡・・・鏡の餅もいちしかに
  ・・・三円節句のひなの餅・・・こちらお旦那さまは
  金銀などのかしわ餅・・・おかみさまは福で持ち・・・女中
  さまではしまだ ほんだのひしもちや・・・さても見事の花持ちや
  ・・・ここは丁度の切りどころ・・・扇の如くに末広く・・・
  うつはの如くに世は丸く 目出度 祝ひおさめ候

   地割り(二)
  オーヤン ソモソモ文字の始まりは オーヤン 陰陽分かれて天地と開き
  オーヤン 天には日・月・星・辰あり・・・人には耳目鼻口あり・・・
  横に縦になり・・・あさ模様のあるものゝ・・・皆自然の文字なり・・・
  世の通用の文字をば・・・唐聖人富貴とかや・・・
  さて世の宝我が国に伝えしは・・・人皇御十五代應神天皇の御代とかや
  ・・・はっかこうを書き添えて・・・陰陽の道理を述て・・・
  皇帝のしんかそうけつとかや・・・鳥の足の跡を学びつゝ
  ・・・千萬巻の数限りなし・・之より世に伝ひしは・・・
  世のおきてむしろをはるは・・・我が日本のおきてとて・・・
  賢き紙の御恵・・・五穀成就秋の田の・・・此の末かたれば長くなり
  ・・・濱のまさごはつくるとも・・この家の御家宝はつきまじき
  祝いおさめ候 エンヤエンヤ アレハサノエンヤ サコノヨサイハ
  ゴザラノエンヤ ヨンヨン ヨヨナ

   大もち歌
  本宅ノ屋根替ヲナシタル時ニ、主人ハ、大黒様トナリ俵ニ跨ギ乗リ、一人ノ姫(適当ナル男 女装ヲナス)側ニ在リテ、大黒様ニ時々給仕(酒ノ)ヲナシタリ。俵ニハ、前面ニ幣帛ヲ立チ、幾十筋ノ縄ヲツケテ引紐トシ、親族其他居合セタル人々、引手トナリ、之ノ俵乗リ給ヘル大黒様ヲ引クナリ。
  大もち歌ヲ歌フ人ハ、大黒様ト相対シテ前面ニ在リ、左ノ歌ヲ歌フ。引手ノ人々ハ合間合間ニ声ヲ揃エテハ、アレヲ附ケルナリ。
  順序ハ、座敷ヨリ初メ、中ノ間・ー茶ノ間ヲ過ギテ納戸ニ納ム。
  「取りつけ取りつけ、取りついたナ、若衆エ、ひとえの日はまだまだ日の出の山からこほりの車に、萬の宝をだんぶと積んで、『大きなる大もち中に、大黒ニッコリ笑ッテ、己れある木やりなくてい引かれまい、木やりをかけて引こう』ト存じ、各々はやしを頼みます」
   はやさぬはやさぬはやしはなくてい語られの サッサー はやそうならば語らうな
   サッサ さらば語りテ引かせるよ サッサ

   やん十郎
  維新前ニハ「コヤ」ト云フ者アリテ、乞食、浮浪人等ノ取締リヲナシタルモノナリ。
  此ノ「コヤ」、正月ニ至レバ種々ノ芸ヲナシ、各戸ヲ廻リテ米、銭ヲ貰ヒシナリ。
  「やん十郎」ハ、即チコノ一芸ニシテ木魚ヲタタキ、門口ニタチ、木魚ニ合シテ語ルモノナリ。
  サーラバやん十郎 當年御吉相の福やん十郎只今参上仕り
  此の方の御旦那様も嬶様も 御息子様も御嫁様も御孫様迄も
  御きげん様良う、良かれ御吉相と 祝ふなり ホンホン
  サーラ 目出度いとは 鶴と亀、鶴は千年、亀万年、幾千代かけて
  万々年、松竹梅とも打開き か程目出度き杉からに
  ・・・・・・・・

   大黒舞
一、ハヤサイナハヤサイナ アヽなに舞もかに舞もおっとりまいて、とりまいて
  アヽ大黒舞とも ハヤサイナハヤサイナ
  アヽ大黒さんと云う人は 此の国の人でもない彼の国の人でもない
  天竺天の三天夫の まかた国の人なれば 丈はちっくり小さくとも
  色が黒くても 笑い顔はしおらし ハヤサイナハヤサイナ
一、サイサイナサイサイナ
  一でお俵をふんまいて 二でにっこり笑しやった 三で盃持たしゃって
  四で世の中よいように 五つで泉のわくように 六つで無病ふくさいな
  七つで何事ないように 八つで屋敷を平めて、
  九つ御倉をぶっ建てた、十で殿さまさ呼ばれて
  これも又目出度いな目出度いな

   サンサエー節
一、くるくるとな、くるくるとな サアヨ、車座敷に居流れて サンサエー
  居流れてな、居流れてなさよ、下戸も上戸も皆なびく サンサエー
一、十七はな十七はなさよ 親にかくしてカネつけて サンサエー
  かねつけてな かねつけてなさよ 笠のしめ緒で顔かくす サンサエー

   鎌倉節
一、かまくらのなー さヽアーアー よい子の御所の チリチン
  御庭に庄屋さんの やれこの庄屋さんの 娘が酌に出た
一、酌に出たそだなーー さヽアーアー よい子の肴 チリチンよりも
  いよ酒よりも 庄屋さんの娘は 目につこりやいた

   トコトンヤ節(明治元年頃)
 軍気ヲ振興シ、国民ノ元気ヲ鼓舞センニハ、歌ニ優ルモノハナイ。サレバ、古来、戦アル度ニ必ズソレ相応ノ歌ガ流行スル。
コノ「トコトンヤ節」ハ、維新ノ際、官軍ノ間ニ歌ハレタルモノデアル。
一、一天萬乗の帝に手向ひする奴と トコトンヤレトンヤレナ
  ならひ外さずどんどん打出す薩長土 トコトンヤレトンヤレナ
一、宮さん宮さん、御馬の前に閃々するのは何じゃいな トコトンヤレトンヤレナ
  あれは朝敵、征伐せよとの錦の御旗、知らないか トコトンヤレトンヤレナ
一、人を殺すも城を取るのも、誰も本意じゃなけれ共 トコトンヤレトンヤレナ
  わし等かとこの御国へ手向ひする故に トコトンヤレトンヤレナ

   雄快・愉快ふし(明治二十七・八年 日清戦争頃)
 此の歌は、明治二十七年日清戦争今や開けんとするに際し、志気を鼓舞せんがため作られ、盛んに流行したるものである。
之れに伴って踊りも考案せられ、日の丸の旗を手にし、白八巻に腰には日本刀をたばさみ、雄壮活溌に舞ふたのである。其の如何に志気を鼓舞し元気を付けたか推測に任せる。

   日清談判
  日清談判破壊せば       品川乗り出す 吾妻艦
  続いて金剛浪波艦       国旗堂々 翻し
  「遺恨重なるチャン坊主」   日本男児の村田銃
  剱の切先 味はえと      我兵各所に進撃する
  何なく支那城打ち潰し     萬里の長城乗っとりて
  「一里半行きや北京城よ」   欽慕欽慕 愉快愉快

   相馬節(明治二十七・八年頃)
一、相馬相馬となー木萱も靡く、ナンダコラヨウ、靡く木萱に サイショ
  花が咲く ナンダコラヨー
一、相馬中村の新開棲が焼けた ノウイ 寝てヽ金とる サイショ
  その四討で ノウイ
一、開花しらずの アラ旧弊人 ナンダコラショー 新聞せんじて サイショ
  呑ませたい ナンダコラショ
一、程よい口車に ちょいと乗せられて ナンダコラショ
  ひくにひかれぬ車どめ ナンダコラショ
一、イロハせす京と習うた子でも ナンダコラショ 今はアイウエオ
  最初サシスセソ ナンダコラショ

   おばこぶし
一、おばこァなんぼになる、此の年暮せば 只の十七
一、おばこァどこさ行く 下町はじれさ豆引きに 豆ば引くもせず
  あんこだの 袖なんど引きたがる
一、おばこァえたかと 裏の小窓からまがってみたりゃ
  おぼこえもせでとなり のばーこなんど 麻をうんでだけ

   さのさ節(明治三十二・三年頃)
一、人は武士 気概は高山彦九郎 京の三條の橋の上
  はるかに皇居を伏し拝み 落つる涙は加茂の水 サノサ
一、今度苦し 日露の戦が始まらば 妾も芸者を止めにして
  主は陸軍ネ わしゃ看護婦 共に西伯利亜で日を暮し サノサ

   都々逸
一、世間渡るに豆腐が手本 豆で四角でやわらかで
一、教えなくとも覚えるものは 慾と食ふとの色の道
一、妾しや主ある一重の桜 人に折らせる枝はない
一、折々亭主は御世話になると 遠火で焦がさぬ焼上手
一、おなじ金でも夜明の鐘と 借りた金とはいやなもの
一、機嫌直して出て見やしゃんせ 丸うなれとの月がさす

   らっぱ節(明治三十八年頃)
一、倒れし兵士を抱き起し 耳に口あて名を呼べば
  ニッコリ笑ふて勇ましや、萬才唱ふも口の内 トコトットト
一、今鳴る喇叭は八時半 あれに遅れりゃ 重営倉
  今度の日曜は無いじゃなし、はなせ軍刀に錆がつく トコトットト
一、私しやよっぽどあはてもの、蟇に拾ふて喜んで ニコット笑ふ トコトットト

   どんどん節(明治三十年〜大正二、三年頃の両度)
一、伊勢は津で持つ津は伊勢で持つ 尾張名古屋は城で持つ
  家のしんしょは アレア嬶で持つ ドンドン
一、駕籠で行くのはおかるじゃないか 妾や賣られて行くわいな
  父様御無事で、又母さんも 御前も御無事で折々に
  音信聞いたり聞かせたり ドンドン

   子守歌 まりつき歌
 左ニ掲グル歌ハ本村児童ノ普通歌フモノノ中、眞柴小学校ニ於テ選択シ、印刷ニ附シテ生徒及家庭ニ配布シタルモノデアル。

  子守歌
柴の折戸のしづやかに     おきなとおぐなはすまいけり
おきなは山にたきぎとり    おぐなは川にぬのあらい
日ごと日ごとの世わたりも   いとあさましき五鈴川
流れ流れるみなもせに     流れ来れる桃の実の
世にたぐいなく大ければ    あなめじらしと持ちかえり
をしきにすえてめずるうち   桃はわれからうちわれて
をのが一人でいでにけり    老のふうふはおどろきつ
またよろこびつとり上げて   桃の中より出でたれば
桃の太郎と名づけて      かざして花とめでにける
次第に人になるにつれ     たけしくも又さとしくて
おきなとおぐなの高き恩    ふかきめぐみにむくいんと
鬼はときどき人里に      わたりてにくきふるまいを
にくしと常に思ふより     きびのだんごをかてとなし
犬さる、きじを從いて     鬼がしまにうちわたり
鬼をたいらげそのしまの    こがね、しろがね草々の
たからをさめかえりきて    おきなとおうなにさヽげつる
ゆたかにとめる身となりて   親につかふるまめこヽろ
げにありがたきためしなり   鬼てふものは世の中の
よこしまな人を鬼といふ    幼な心によしあしを
しらせんためにつたえる    草の人のかぞえ草

   同
一、ねんねんよしよしねんねんねん  よい子ぞなくなーねんねんよ
  いたくは母ぞなでるも母ぞ    よい子ぞなくなーねんねんよ
  神もよい子を守らせ給ふ     よい子ぞなくなーねんねんよ

   同
一、ぼうやはよい子だねんねしな   ねんねんねんねんねんねんよ
  ぼうやはお守につれいれて    どこへゆくのがおすきです
二、春は羽つきたこあそび      梅やさくらの花のした
  桃の節句になりしなら      白酒あげよか ひなの前

   同
  ねんねん子もりはどこえいた   み山の谷の花おりに
  一えだおっては髪にさし     二えだおおてはえりにとめ
  三えだとるまに日がくれて    さとに帰るにゃ道もなし

   同
  ねんねんよ ねんねんよ     ねんねのおもりはどこえいた
  あのやまこえて里えいた     さとのみやげのなにもろた
  でんでんたいこにしょうのふえ

   手まり歌
  正月かど松 二月はつうま 三月ひなさん 四月はしゃかさん 五月ごせっく
  六月てんのう 七月たなばた 八月八さく 九月きく月 十月えびしこ
  ゆんべえびしによばれて参たら、朝のはまやき すゞめすいもの
  金のおはしで一ぱいしましょ、ツーツー 二はいすいましょう ツーツー
  三はいすいましょう ツーツー 四はいすいましょう ツーツー
  五はいすいましょう ツーツー 六ぱいすいましょう ツーツー
  七はいすいましょう ツーツー 八はいすいましょう ツーツー
  九はいすいましょう ツーツー 十ぱいすいましょう ツーツー
  これでおはらに一ぱいになりました まずまず 一かんかしました

   同
  やまでらのおしょさんは     まりをつきたいまりがない
  ふくろにお猫をつめこんで    ポンとつけあニャンとなく
  おにやおにやのにやにや

   お手玉歌
  お一つお二つお三つお四つ お五つおんむなくてごいくてごいた
  ソラくてごいおだい 手もない ばしょもない つんぶつんぶ びくせんめん
  からせんめん 玉にがし玉にがしにがした、あきつって からつって おきとんととばす
  ほしいかきおとし おとしでなくて ひろふでなくて ひろふて
  ゆいつけて あんげて おもしかって たして一俵、二俵、三俵で おいてこい
  一把しょって 二把しょって、ころんだって かまわん 米ふきさん、ぬかかえしさん
  ソラおんであって、おぜんすえ、おぜんすえ お椀すえ、お椀すえ 箸そろえ
  はしりまへに もって行って お椀洗い コチコチ 箸あらい ザラザラ
  お手ふきふきました、まめうねうね 一うね 二うね 三うね 四うね 五うね
  六うね 七うねうね うねかえして おいてこい
  土かけ土かけ 水うって そそうて ひんむりかえす 手にとって たべます
  たべました、両手にまかしょ まかました 一ガイチャ 二ガイチャ 三ガイチャ
  四ガイチャ 五ガイチャ 六ガイチャ 七ガイチャ
  一アサチャポポ 二アサチャポポ 三アサチャポポ 四アサチャポポ 五アサチャポポ
  六アサチャポポ 七アサチャポポ

   羽子歌
一、セッセッセ
  青山どてから白い蝶が三つ三つ 赤い蝶が三つ三つ
  其中女の子がはかまをはいて スッポン ポン
二、セッセッセ
  青山どてから白い蝶が三つ三つ 赤い蝶が三つ三つ
  其中男の子がはかまをはいて スッポン ポン
三、セッセッセスッポン ポン
  青山どてから白いとりが三つ三つ 青いとりが三つ三つ
  其後黒いとりが五・六羽 スッポン ポン


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底本:「復刻 眞瀧村誌」
 2003(平成15)年6月10日発行
発行者 眞瀧村誌復刻刊行委員会
代表 蜂谷艸平
 2004年3月10日作成