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二、明和ノ旱魃
明和八年、大旱魃ニテ五・六月、一滴ノ降雨ナシ。農民ハ皆、高山ニ登リ、晝夜雨乞シタレ共、其効験ナク、田畑ノ亀裂・作物不登、非常ナル困難ヲ極メタリ。
此ニ於テ、徳川幕府ハ、豆腐及濁酒並ニ糀ノ製造ヲ停止セラルヽ。曰ク、
當年、大旱魃・不作ナルヲ以テ、豆腐製造・濁酒製造・糀営業ヲ停止セラル。右郷ハ不申及町タリトテ、堅ク停止、百姓ハ、振舞タリトモ、酒ヲツカイ申候事、堅ク停止ノ事。御財附衆見留時ハ詮議取質シ科料ニ処スベシ。
三、天明飢饉
天明四年、飢饉ニテ仙台町民大ニ苦ム。伊達中将、御簾中圓舎ヲ御出シ、栗原郡迫米郡御買上、為ニ物價騰貴、道中旅籠代三百六十文木賃六十四文トナル。
仙台藩ニテハ、肥後國細川越中ノ守ヨリ雑穀ヲ借入、飢民ヲ救助ス。市民ノ分限者ト雖、近江粥ト称シテ牛蒡・人参・芹・豆腐・干菜ヲ入レ、米ヲ混テ食ス。御前揃並ニ御奉行向モ、朝計御飯ニテ、夕飯粥ニ被成、御夜食ハ被相控様ニ御座候。夜々盗人多ク、乞食雲霞ノ如ク、餓死セントスル者頗ル多シ。於道路死者凡六万七千人。（仙台藩御用溜日記ニヨリ）
四、天保ノ飢饉
天保四年ニハ大違作ニテ、出羽ハ奥州ヨリモ甚シク、奥州ニテハ、南部領ハ仙台領ヨリモ甚シ。從テ出羽南部領民ノ流民、仙台領ニ入リ来シモノ引モ切ラズ。一関領ニテハ、此年ノ収納例年ノ十ガ一、「定物成米一万五千八百五十石餘ナルニ、本年ハ千五百八十四石ノ収納ナリ」ニテ、士民ノ難儀云フバカリナシ、云々。
天保四年以来、不作ノミ。引續キ来ルニ、仝ジキ七年八月ニハ、大風雨数日ニワタリ非常ノ凶欠ニテ、一関領ノ収納米ハ纔ニ例年ノ二分ノ六厘ニ當レリ。此年、出羽ハ多少ノ出劣リナガラ良ク稔リタレド、南部領ハ少許ノ稔リニテ、仙台領ハ不作最モ甚シカリ。亦、カクモ一関藩ニテハ士卒ノ扶持見込ナク、農商ノ輩モ困難云ハンカタナカリシ故、田村家ハ、江戸ニテ佐竹家ト約シテ米穀ヲ秋田領ニテ買入レ、之ヲ西海ヨリ本吉郡追波濱ヘ回漕スルコトトナセリ、云々。
仝ジキ九年七月ニ霖雨アリ。又々大違作ニテ、収納米纔ニ千五百四十七石余ナリ。其ハ田植ヨリ農民既ニ食物ニ乏シク、身体疲憊シタレバ、耕転充分ナラズ。培養欠クル所アリケリ。稲ノ生立良好ナラザルニ、出穂ノ節ニハ又一段ノ冷気ナリシガ故也。藩ノ倉庫、之ガ為ニ空乏シ、纔ニ宗藩タル伊達家ノ救助ニヨリテ一年ヲ送レリ、云々。（之ハ野田一関中学校教諭ガ田村家ノ家譜ニヨリモノセラレタルモノナリ）
今、古老ノ常ニ言フ所ハ、即チ天保ノ飢饉ナルベシ。當時ノ藩政ハ、穀物ヲ他藩ヘ出スコト能ハザリシ制ナリシヲ以テ、如何ニ金銭アリト雖モ、之ヲ購入スルコト能ハザリシナリセバ、盗人諸所ニ起リ、乞食群リ来リテ、在方ヲ襲ヒ、タメニ人民ハ安逸ノ多耳ニスル所ナリ。又、人民ハ、貯ヒ置ケル雑穀モ己ニ食ヒ盡シテ、山ニ登リ、木ノ芽・葉根等モ堀リ盡シ、藁モ刻ミテ松脂ニ入レ、少許ノ「シイナ」等ヲ混シ餅ニ搗キ食シ、飢ヲ凌ギタルモノアリ。カヽル者ハ遂ニ全身腫シテ死シタリト。
道路ニハ、老人・子供ノ餓死シ、或ハ一歩モ歩ムコト能ハズナリテ、悲鳴ノ聲モ遂ニ唱シ果テ、死ニ瀕スル様、實ニ目モ當テラレザル有様ナリシト。之ヲ明治ノ聖代ニ於ケル東北ノ飢饉、即チ三十五年・三十八年ノ其レニ比シ、如何ノ感カアル。
サテ単ニ本村ニ関スルモノハ記録ノ存スルモノナク、記述スル由ナシ。藩ハ種々ノ方法ヲ講ジ、他藩主ニ交渉シテ雑穀ヲ買ヒ求メ、之ヲ士民ニ頒チタリト雖モ、到底之レノミニテ救済スル能ハザリシナリ。故ニ在方ニテ雑穀ノ貯ヘタル者ニ説キ、「御貸上ケ」ト称シテ出サシメ、窮乏ヲ救ヘリ。即チ之時ニ際シ御貸上ゲヲナシタル者ハ、裃着用・苗字帯刀ヲ許シ、士分ヲ以テ待遇シ、毎年正月ニハ参賀礼ヲ行ハシメタリ。世ニ之ヲ「ケカツダンポウ」ト云フ。
本村ノ「御貸上ゲ士」ハ左ノ如シ。
三 関
菊池傳八 菊池傳四郎 小嶋東藏 菊池政治 菊池房松
千葉林ノ助 千葉利平
眞柴（鬼死骸）
阿部官兵衛 今野與治郎 千葉嘉藏 斉藤初太郎
千葉善太郎 稲部平之 千葉仙松 小岩善左ェ門
佐藤平七 千葉四郎兵衛
瀧澤（下滝澤）
千葉萬太夫 菅原武左ェ門 阿部種藏 阿部長右ェ門
佐藤芳右ェ門 阿部良作 阿部五郎兵衛 千葉才三郎
千葉平三郎 菅原作十郎 岩本東一郎 蜂谷孫四郎
千葉倉松 蜂谷猪之松 渡邊正右ェ門 石川浅吉
岩本東太夫 吉田庄藏 小ノ寺長左ェ門 阿部丈作
菅原三郎太 菅原重ノ助 阿部長十郎
狐禅寺
佐藤十右ェ門 小ノ寺英太夫 木村助ノ亟 小ノ寺栄蔵
木村源吉 千葉善太郎 佐藤孫右ェ門 佐藤平十郎
尚、御金倉建設寄附ニ付、苗字帯刀御免ニナリタルハ、
千葉惣兵衛
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底本：「復刻 眞瀧村誌」
２００３（平成１５）年６月１０日発行
発行者 眞瀧村誌復刻刊行委員会
代表 蜂谷艸平
２００４年３月１０日作成