五、明治維新以後ノ豊作被害概況
　明治維新以後ノ概況ニツイテハ、」村民ノ記憶ニ新タナル所ナルベシ。然レ共、不肖、今之ヲ記述セント欲セバ、唯単ニ本村ニ関スルモノトシテノ記録ニ乏シク、且ツ又、編者ノ寡聞ナル、到底諸君ニ満足ナル資料ヲ供シ得ザルハ、甚ダ汗顔ノ至リトスル所ナリ。
　明治元年ハ凶作ナリシト云フ事實、大日本農史及其他ノ書ニ見ユレドモ、村誌トシテ掲載シ得ベキ材料ナシ為メニ此ニ當時ノ状況ヲ記述スルヲ得ズ。

　明治八年ノ水害
　當年ノ洪水ハ、今尚古老ノ言フ所ニシテ、北上川ヨリ溢レタル濁水ハ一関町坂ノ下迄来リ、田村神社鳥居附近境内ノ杉ノ木ニ舟ヲ繋ギタリト云フ。今、其ノ本村ノ状況ヲ取調ブベキ材料ナシ。此ニ水澤県下ノ状況顛末ヲ、當時ノ御用留帳ヨリ抜粋シテ掲グベシ。以テ本村ノ状況ヲ推察セラレヨ。
　水澤県下ノ水害顛末
　明治八年七月八日ヨリ、霖雨三日三夜ニシテ、北上川大洪水。概略左ノ通リ。
　　一、居　家　　　　　八千七百八十二戸
　　　　内譯　流失　　　七十九戸
　　　　　　　潰家　　　百五十三戸
　　　　　　　破損　　　壱千二十六戸
　　　　　　　水湛　　　七千四百二十四戸
　　一、厩・納屋　　　　六千三百九十八棟
　　　　内譯　流失　　　二百五十一棟
　　　　　　　潰家　　　七百十六棟
　　　　　　　破損　　　三百九棟
　　　　　　　水湛　　　五千百二十二棟
　　一、藏破損　　　　　拾軒
　　一、学校神社破損　　四軒
　　一、家流失ノ戸数　　六百十五軒
　　一、落橋　　　　　　八百二十五ヶ所
　　一、堤防破損　　　　壱千八百九拾九ヶ所
　　一、用悪路杁樋破損　壱千八百四拾壱ヶ所
　　一、山崩　　　　　　弐百六拾五ヶ所
　　一、道路破損　　　　壱千九拾参ヶ所
　　一、舟流失　　　　　三艘
　　一、溺死　　　　　　五拾六人　内男三十一人、女三十五人
　　一、死馬　　　　　　六匹
　　一、田反別　　　　　壱万六千四百七拾壱丁反三畝十九歩
　　　　水湛及崩欠押堀等ノ分
　　一、畑反別　　　　　九千九十四丁壱反五畝十二歩
　　　　前同断
　　一、流穀物類　　　　壱万千九百三十九石二斗一升
　　一、酒流失　　　　　七百六十四石四斗
　　一、醤油流失　　　　百九十二石
　　一、繭ノ流失　　　　四千百石
　　一、水門破損　　　　百五十七ヶ所　　　　　　　以上


前頁　次頁　目次　歴史　ホーム

---

底本：「復刻　眞瀧村誌」
　２００３（平成１５）年６月１０日発行
発行者　眞瀧村誌復刻刊行委員会
代表　蜂谷艸平
　２００４年３月１０日作成