前頁 次頁 目次 歴史 ホーム
第十五章 交通
第一節 総 説
本村ハ、本県第二ノ都会タル一関町ニ隣シ、村役場ハ一関停車場ヲ距ル僅カ二十八町ノ地ニアリ。真柴部落ニハ國道、鉄道通ジ、狐禅寺方面ハ県道ニ沿ヒ、滝沢部落ハ弥栄村、東磐井郡薄衣村ニ通ズル要路ニ在リ。
地勢又甚ダ高峻ナラザルヲ以テ、交通不便ヲ感ズルコト少シ。真柴・狐禅寺方面ニハ馬車ノ往来自在ナレドモ、滝沢及牧沢ノ地ニ至ルニハ、カッパ掛坂又ハ横崖坂等ノ坂ヲ越サルベカラザルヲ以テ、人車・馬車ノ通ゼザルヲ遺憾トス。
然レドモ、大正三年ヨリ郡費補助ヲ得テ滝沢ヲ通過スル薄衣道路、牧沢ヲ通過シテ金沢村方面ニ至ルニ道路ノ改修ヲ行ヒツヽアレバ、此ノ工事竣成ノ暁ニハ、車馬ヲ通ズルコトモ得ベク、大ニ利便ヲ感ズル至ルベシ。
北上川狐禅寺岸場ニハ、日々、東磐井郡薄衣間及石巻港間ノ定期航廻船アリ。川ニハ船橋ノ架設セラルヽアリテ便利ヲ覚ユ。
第二節 道路・鉄道・水路
一、國 道
國道ハ、宮城県栗原郡萩野村字片馬合ヨリ真柴字西沢ヲ北ニ貫キ、千刈田部落ノ東北側ヲ通過シテ一関町ニ至ル。此ノ間三十町トス。
從前ノ國道ハ、即チ、山道ニシテ、宮城県栗原郡荻野村内峻坂ヲ以テ有名ナル十萬坂ヲ越エ有壁駅ニ至リ、之ヨリ真柴字東沢地内朴木沢ノ奥ヲ通リ、山嶺通リ字牧田ニカヽリ椚坂ヲ通リテ、鹿島神社下的場ヨリ山ニ沿ヒ千刈田ニ至リ一関町ニ入リシモノナリ。サレバ山坂多ク、車馬ヲ通ズル能ハザルヲ以テ、明治十六年國道改修セラレ、今日ノ道路トナレリ。
二、縣 道
縣道ハ、一関町地主町角ヨリ大槻街ヲ距、本村三関ニ及、狐禅寺ヲ通過シ、北上川ヲ越エテ東磐井郡ニ入リ、気仙沼町ニ至ルモノナリ。本村内縣道ノ延長ハ□□町トス。陸前気仙沼町ニ至ル道路ハ、狐禅寺字八郎沢ヨリ滝沢字藤ニ至リ横石船場ヲ渡リテ東磐井郡ニ入リシモノナリシガ、明治十六・七年ノ頃、笠原三安氏、有志ヲ説キ、今ノ狐禅寺川岸ノ地ニ渡船場ヲ開設セシメタルニ、横石船場ニ比シ地理有理ナルヲ以テ自然交通頻繁トナリ、明治二十六年、気仙沼町ニ通ズル縣道改修セラルヽニ際シ、遂ニ現在地ヲ通ズルニ至レリ。
北上川ヲ越ユルニハ、從前ハ私設渡船ニ據リシガ、往来ノ頻繁ノ今日、不便少ナカラザルヲ以テ、明治□□年、岩手縣狐禅寺川岸ニ船橋ヲ架設スベク計画シ、之ヲ架設セリ。千歳橋之レナリ。
三、里 道
村内ヲ通ズル里道ノ重ナルモノヲ擧グレバ、
一、滝沢村ヲ通ジ本郡弥栄村ヲ経テ東磐井郡薄衣村ニ至ルモノ（旧気仙沼街道、即チ上街道）
二、真柴ノ牧沢ヲ経テ金沢村ニ至ルモノ（旧石巻街道）
三、真柴字柳沢ヲ経テ宮城縣岩ヶ崎町ニ至ルモノ（旧山形街道）
四、真柴字東沢ヲ経テ金沢村、花泉村ニ至ルモノ、即チ流レ道路
五、三関横崖坂ヨリ入リ滝沢ヲ経テ東磐井郡方面ニ至ルモノ（下街道）
此レ等ハ、重ナル里道ニシテ、年々、其ノ関係者ニ於テ修理手入レ行ハル。村ハ相当経費ヲ置キテ補助ヲナシ、修理ノ完全ヲ期シ居レリ。然レドモ、村費補助ノミニテハ充分ナラザルヲ以テ、尚郡費ノ補助ヲ仰ギ改修ヲナス。現ニ道路ノ一及二ハ大正二・三年ニ於テ郡費補助金八百五拾円ヲ受テ改修ヲ行ヒタリ（内訳一ニハ大正二年度四百五拾円、仝三年度弐百円也、二ニハ大正二年度ニ於テ弐百円也）此ノ外、尚、村内各部落ニ通ズル里道アリ。特設通学路ニアリテ、サシタル困難ヲ認メズ。
四、鉄 道
鉄道ハ、花泉村ヨリ来リ、本村真柴ト宮城縣萩野村境ナル吉ヶ沢トンネルヲ通過シテ東沢ノ中央ヲ貫キ一ノ関駅ニ至ル。本線ハ、明治二十二年開通、元日本鉄道株式会社ノ経営ニ係リタルモノナルガ、明治□□年ヨリ鉄道院ノ管理ニ属シ、東北本線、即チ之レナリ。東沢内線路ハ上リ傾斜ニテ、列車停滞スルコト珍ラシカラズ。
五、水 路
本村狐禅寺川岸ハ、北上川航行ノ要路ニ当リ、日々、東磐井郡薄衣村・宮城縣石巻港等ノ定期廻航船往来シ、交通頻繁ナリ。蒸気船ハ、左ノ二航交代ニ毎々、狐禅寺・石巻港間ヲ航廻ス。
一、登米丸 四十五頓 九十磅［注１］ 一、宮城丸 四十五頓［注２］ 八十磅
大正二年ヨリ、発動汽船ノ廻航ヲ見ルニ至レリ。一ヲ天来丸ト云ヒ、二十頓十二馬力ノモノナリ。毎日、狐禅寺・石巻間ヲ往来ス。外ニ二隻発動汽船アリテ、狐禅寺薄衣間ヲ日ニ四回廻送ス。其ノ船左ノ如シ。
一、亀岡丸 約十頓 八馬力 一、大功丸 約十頓 十二馬力
狐禅寺川岸ノ今昔
北上川ハ、古来ヨリ二陸交通ノ中枢ニシテ、人文発達ヲ促シタルコト少カラズ。サレバ、二陸ノ交通ハ、鉄道開通以前ニ於テハ、此レニヨル外ナカリシナリ。田村候一関ニ移封スルヤ、御倉ヲ此所ニ置キ、穀物輸出ニ便セリ。
其ノ後、維新後ニ於テハ、検疫所ノ設置ヲセラレタルアリ。之レヲ以テ見ルモ、交通ノ要路タルモ一般ヲ伺フヲ得ベシ。又、石巻港間ノ旅客貨物ノ交通運輸ノ便ヲ計ランガタメ、盛岡市北上株式会社ハ蒸気船ノ航廻ヲ開始シ、此所ニ出張所ヲ置キ一時盛ナリシガ、明治二十二年鉄道開通後、之レガ影響ヲ蒙リタメニ航廻モ停止トナリ、遂ニ明治三十年ニハ同会社ハ出張所ヲ廢スルニ至レリ。
然レドモ、当時既ニ狐禅寺・佐藤直吉、舞川村・小野寺善太郎諸氏ハ、運送店ヲ開業シアリシヲ以テ、廻航運送取扱方ヲ同店ニ依託セリ。
明治二十六年、縣道改修セラレ、同地ヲ通過スルニ及ビテ、貨物ノ集散・人馬ノ往来頻繁ナルニ至レリ。一関町ニハ、客馬車通ジ、近時、発動汽船ノ廻航開始セラレタルニ及ビ、稍々、其ノ面目ヲ改ムルニ至レリ。然レ供、貨物ノ運輸ハ到底、昔日ノ比ニアラザルベシ。
前頁 次頁 目次 歴史 ホーム
注１：磅 ポンド
注２：頓 トン
底本：「復刻 眞瀧村誌」
２００３（平成１５）年６月１０日発行
発行者 眞瀧村誌復刻刊行委員会
代表 蜂谷艸平
２００４年３月１０日作成